平成27年2月6日
第1 審議会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第2 本件審査請求に至る経緯
平成26年6月29日(30日受理) 公文書開示請求
7月14日 公文書不存在決定通知
7月14日 公文書開示請求拒否決定通知
7月20日 行政不服審査法第5条の規定による審査請求
第3 開示請求の内容等
1 開示請求の内容
(1) 国道9号線 鳥取県東伯郡北栄町江北付近の下り車線に設置されたすべての超音波車両感知器が平成26年6月に測定したデータ
(2) (1)の場所・時において使用された精度校正表
(3) 上記請求者が提出した下記書類の授受簿。
1 平成26年6月23日付、鳥取県警察本部長宛【申立書】
2 平成26年6月22日付、倉吉警察署長宛に提出した【意見書(タイトル記載なし)】
2 実施機関の決定内容
・不存在決定
〔公文書の件名〕
国道9号 鳥取県東伯郡北栄町江北付近の下り車線に設置されたすべての超音波車両感知器が平成26年6月に測定したデータ
・開示請求拒否
〔公文書の件名〕
請求者が提出した下記書類の授受簿
平成26年6月23日付、鳥取県警察本部長宛【申立書】
平成26年6月22日付、倉吉警察署長宛に提出した【意見書(タイトル記載なし)】
3 実施機関の決定の理由
・不存在決定
国道9号北条バイパスの下り車線にある超音波車両感知器は、北条オートキャンプ場先信号交差点に1基設置しているが、データを保存する機能を有していないため
・開示請求拒否
鳥取県情報公開条例第12条第5号に該当
当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号の非開示情報を開示することとなるため。
第4 審査請求の理由
1 公文書不存在決定(鳥交規発237号)について
公文書を保有していない理由として、国道9号線・・・データを保存する機能を有しているいない、との回答を得たが、データが物理的に保存しないことが、適正な取り扱いであるかの根拠が全くない。道路交通規則違反で人を刑事罰にかけようとするならば、データを保存する機能を有していない超音波車両感知器を用いることが、果たして許される行為なのか。軽微な違反とはいえ、交通反則の告知行為は、17kmの速度超過違反では本則として刑事訴訟の対象となり、また行政上の刑罰(免許点数の減点)など、申出人にとって不利益を被らせる内容である。
一般の感覚ならば、刑事訴訟の証拠物件は説明責任がある原告(ここでは検察庁および司法警察員)が大切に保管するものだと捉えられる。現地での交通取締を行った後、毎回データをリセットしていては、自ら重要証拠を消去しているようで、いささか不思議な行為である。速度超過の誤差が2kmあり法定速度より15km未満であれば(任意ではあるが)反則金の金額が違ってくる。また、現地での警察職員の裁量にていくらでも改ざんが可能となってしまう畏れも含んでいる。データ保存とは、そういった行政上の瑕疵となる危うさを孕んだ行為の正当性を立証すべきものであり、通常であれば双方の訴えの利益が消滅するもでは保存しておくべきものと考える。
現在の技術ならば、電子磁気媒体においてデータを保存することは比較的容易であり、いたずらに保存をしないことに何か理由があるのか。根拠を求めたい。
(1) データを保存する機能を有していない機器を購入した理由をお聞きしたい。
(2) データを保存しない法的根拠をお聞きしたい。
(3) データを保存しないことが警察組織の裁量権である根拠があるならば、解釈を求める。
(4) 行政上の処分(免許点数の減点)の取消しを求めた場合、データがない状況でどうやって速度超過違反の正当性を立証するのか、ご教授願いたい。
2 公文書開示請求拒否決定(鳥交指発第285号)について
公文書開示請求拒否決定は明らかに不合理である。
開示拒否理由として、「当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで・・・(要約すると個人もしくは公の不利益となる)ため」とあるが、人権を制限することによる利益と制限しない場合の利益とを比較して結論を出す比較衡量論をまったく採用していない。申出人はあくまで交通反則違反行為により刑事告訴を被るべき被告である。刑事訴訟の時期までにあらゆる証拠を収集しようとしている状況であるが、【申立書】および【意見書】を提出したことの公的な授受がなければ、口頭ではぐらかされる畏れがある。
事実、【申立書】【意見書】等を送付したのち、担当者より架電があり、公文書として受け付けず、口頭で収集させたい旨の説得が何度もあった。申出人は自己の利益も守らんがために授受簿にて、行政文書として存在させ、証拠書類として残ることを望んでいるのであり、鳥取県情報公開条例第9条第2校第2号の規定に仮に反するものであっても、開示請求する権利は失われないものと思料する。
(1) 申出人の利益を最大限尊重し、部分開示の決定を考慮しなかったのか。ご教授願いたい。
(2) 鳥取県情報公開条例第9条第2校第2号の守るべき利益は、具体的には何なのか。説明を求める。
(3) 授受簿の存在は行政庁では当然と考えるが、「授受簿の存在か否かで・・・条例の非開示情報を開示することになる」との理由がみえない。授受簿の存在の可否で条例に抵触するとは読み取れないため、具体的な説明および解釈を求める。
第5 実施機関の説明とそれに対する審査請求人の意見
1 本件請求の対象公文書について
本件請求は、鳥取県東伯郡北栄町江北付近の下り車線に設置されたすべての超音波車両感知器が、平成26年6月に測定したデータと特定の個人が提出した鳥取県警察本部長宛申立書と倉吉警察署宛に提出した意見書(タイトル記載なし)の授受簿の提出を求めていると認められる。
したがって、本件請求の対象とされた公文書について、超音波車両感知器が平成26年6月に測定したデータについては、データがなく不存在の決定を行ったものであり、授受簿については、当該公文書の存否を答えるだけで、特定個人が、警察本部及び倉吉警察署に申立書及び意見書(タイトル記載なし)を提出したか否かの事実を答えたことと同様の結果になると認められる。
2 不存在決定とした理由
超音波車両感知器とは、道路上約5~6mの高さに設置された超音波送受器から超音波パルスを周期的に発射し、その往復時間の長短により車両の存在を感知する機器である。
鳥取県東伯郡北栄町江北付近の国道9号北条バイパス下り車線にある超音波車両感知器は、北条オートキャンプ場先交差点の信号機の一部として設置しているもので、速度取締りに使用する機器ではない。
この超音波車両感知器は、同器の下を通過する国道9号の車両を感知して、その感知情報(通過台数)を信号制御機に送信し、その感知情報に応じて、国道9号側の青色信号の表示秒数を自動延長し、国道9号の交通の円滑化を図っている。
さらに用途上、超音波車両感知器や信号制御機で感知情報のデータを保存しておく必要性はなく、超音波車両感知器や信号制御機も感知情報のデータを保存する機能を有していない。
以上のことから、「鳥取県東伯郡北栄町江北付近の下り車線に設置されたすべての超音波車両感知器が、平成26年6月に測定したデータ」を保有していない。
3 開示請求拒否とした理由
(1) 鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号該当性について
鳥取県情報公開条例(以下「条例」という。)第9条第2項第2号は、個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。第12条1号において同じ。)であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがあるものについては、同号ア、イ、ウ、エに該当する情報を除き、これを非開示と規定している。
申立人は、特定の個人が鳥取県警察本部長宛に出した申立書及び倉吉警察署長宛に提出した意見書(タイトル記載なし)の授受簿の開示を求めているものであるが、当該公文書の存在を答えること自体が、特定の個人が鳥取県警察本部長等に申立書等を提出したか否かの事実を答えることと同様の結果となり、これは、個人に関する情報であって、特定の個人が識別される情報であると認められるので、条例第9条第2項第2号に該当する。
また、条例第11条に、条例第9条第2項の規定にかかわらず、開示請求に係る非開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、当該公文書を開示することができると規定しているが、本件請求に係る個人情報は、特定の個人が鳥取県警察本部長等に申立書等を提出したか否かの情報であり、その性質から一般的に他人に知られたくないと考える匿名性の高い情報である。本件請求において、これを非開示とすることによって保護される個人の権利利益と開示されることによって確保される公益を比較しても、開示することによって確保される公益が、非開示とすることによって保護される個人の権利利益に優越する特段の事情は認められない。
(2) 公文書の開示請求拒否について
条例第12条第5号は、公文書の存否の事実により特定の情報の存在が明らかになる開示請求があった場合で、当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、公文書の存在を明らかにしないで、開示請求を拒否することが出来る旨を規定している。
本件請求の対象とされた公文書については、その存否を明らかにするだけで、条例第9条第2項第2号に該当する非開示情報を開示することとなるため、公文書の存否を明らかにしないで本件請求を拒否した決定を行ったものである。
(3) 本人による自己の情報の開示請求について
条例に定める情報公開制度は、条例第5条に「何人も、実施機関に対して、当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる。」と規定されている。
したがって、情報公開制度は、何人に対しても、目的いかんを問わず開示請求を認める制度であるが、請求者の自己の情報であることを理由に特別に行政文書の開示を受けることまで認められているものではない。
〔審査請求人の意見〕
公文書開示請求拒否決定(鳥交指発第285号)についての第4の2の(1)~(3)の質問の回答となっていないため、容認できない。
4 その他
本件公文書開示請求書は、郵送されたものであり、審査請求人に対して当該請求書の記載内容等を確認するため電話連絡したが、連絡がとれず、超音波車両感知器のデータ保存に関する説明及び個人情報に係る公文書の開示請求は個人情報開示請求で請求可能である旨を教示できなかった。
そのため、決定通知書を送付する際に、個人情報開示請求に関する説明文書を同封し、送付している。
第6 本件審査請求審議の経過
平成26年 8月29日 諮問書を受理
9月26日 実施機関が理由説明書を提出
10月5日(6日受理) 審査請求人が意見書を提出
11月18日 審議
※ 審査請求人は、本審議会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。
第7 審議会の判断
1 不存在の決定について
「超音波車両感知器は器下を通過する車両を感知し、感知情報(通過台数)に応じて信号機の表示秒数を操作して交通の円滑化を図るものであり、感知データを保存しておく必要がない」とする実施機関の説明に不自然、不合理な点があるとは認められない。
なお、公文書開示請求書及び審査請求書の内容から、審査請求人は、車両通過台数の感知データではなく速度取締に使用する機器の測定データを求めているものと考えられる。
このことは実施機関も認識しており、審査請求人に対して架電と説明文書の送付により、当該事項の教示に努めたことが確認された。実施機関の開示に係る事務に問題があったとはいえず、公文書開示請求書に記載された「公文書の件名又は内容」を文面のまま解釈して不存在決定を行ったことは理解できる。
2 開示請求拒否の決定について
鳥取県情報公開条例第12条は公文書の存否に関する情報の規定であり、第1号から第5号に該当するときは、公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができる旨を定めている。
本件開示請求を見ると、審査請求人は、自己の提出した申立書及び意見書の授受簿の開示を求めており、これについて開示等の決定を行ったときは、審査請求人が申立書及び意見書を県警に提出したという事実を開示すること、即ち非開示情報(鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号に規定する個人情報)を開示したのと同様の結果を生じることとなる。
よって、実施機関が鳥取県情報公開条例第12条第5号を根拠に開示請求拒否の決定を行ったことは、適切な判断といえる。
なお、これら情報は、個人情報開示請求であれば開示されたものと考えられるが、実施機関は、審査請求人に対して架電と説明文書の送付により当該事項の教示に努めており、開示に係る事務に問題はなかったものと考える。