防災・危機管理情報


答申第26-7号

答申第26-7号

                                                            平成27年6月29日

第1 審議会の結論

 実施機関の決定は妥当である。

第2 本件異議申立てに至る経緯

 平成26年10月5日(6日受理) 公文書開示請求
   10月20日 公文書開示請求拒否決定通知
   10月31日 行政不服審査法第5条の規定による異議申立て

第3 開示請求の内容等

1 開示請求の内容

 平成26年8月3日に請求者が提出した司法警察職員懲戒請求書の処理状況がわかる書類(授受簿等、鳥取県公安委員会が保有する該当するすべての文書)

2 実施機関の決定内容

 開示請求拒否決定

3 実施機関の決定の理由

鳥取県情報公開条例第12条第5号に該当
 個人を特定した請求内容であり、当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号の非開示情報を開示することとなるため

第4 異議申立ての理由

 請求人は、平成26年8月3日に司法警察職員懲戒請求書の処理状況がわかる書類(授受簿等、鳥取県公安委員会が保有する該当するすべての文書)について公文書開示請求をする。
 鳥取県公安委員会は、開示請求を拒否する理由として「鳥取県情報公開条例12条第5号に該当」を挙げられました。
 請求人は、今回の開示請求にあたっては、鳥取県情報公開条例12条第5号および第9条第2項に該当しないと考えるので、審査請求します。
 また、『鳥取県情報公開条例の主旨、解釈及び運用』では、次のように明記されている。

第12条 第2 解釈・運用 2
 本条により開示請求を拒否するときは、第7条第1項の規定に基づき決定を行うこととなるが、これは行政処分であって、争訟の対象となるものであり、必要にして十分な理由を提示することが義務付けられる。本条の適用は、あくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなければならない。

 この文言をそのまま受け止めれば、上記開示請求拒否決定があった該当公文書については、すべてにおいて鳥取県警察における条例の拡大解釈および条例の濫用と思料される。
 理由は次のとおりである。
 (1) 公文書の存否だけで鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号の非開示情報(すなわち個人を識別されうる)部分を含んでいるとするが、存否だけでは個人情報が識別されうるべき状況にはならない。
 (2) また個人情報が識別されるなら、部分開示決定であってもなんら問題のないはず。
 (3) 第12条の解釈によっては「行政処分であって・・・必要にして十分な理由を提示することが義務づけられる」とあるのに、拒否決定通知書にはなんらの理由の提示もなく、義務違反である。
 (4) 刑事訴訟にかかる部分を一律に開示拒否するのは不整合。「・・・あくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなければならない(義務規程)」であるにもかかわらず、鳥取県警察の自己の解釈(個人情報等守るべき公の利益)が部分的に存在するからといって、なんらの具体的な検証もせずに、一律に開示拒否すべきことは、行政庁の怠慢である。
 (5) 鳥取県警察は、鳥取県情報公開条例第9条第2項第2項の非開示情報(個人情報等守るべき保護利益)を理由としてあげているが、申立人(刑事訴訟の被告)の利益との比較衡量した説明に一文も触れていない。
 『鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用』第9条第2項第2号(個人に関する情報)関係第2 解釈・運用 8では「・・・公にすることが必要であると認められる情報に該当するかどうかは、非開示とすることにより保護される利益と開示することによりもたらされる利益とを比較衡量して判断することとなる。」とあるが、拒否決定通知書からは開示すべきか否かの個人情報に留意し、申出人の利益が、ことさら無視されている感が否めない。そして比較衡量の対象は、組織外の一般人と組織内の司法警察職員であるが、これを画一的に判断するのではなく、身内に対して厳しく接していく姿勢が、行政組織には強く求められるものである。
 以上、鳥取県情報公開条例の趣旨に立ち返り、情報公開の全部非開示が正しいのか再度厳密に審査されることを望む。
 また、拒否の理由として、鳥取県警察本部が第12条第5号を提示しておられるのであれば、条文の解釈にある「・・・必要にして十分な理由を提示することが義務づけられる。本条の適用は、あくまで例外的なものであり、厳格に解釈し、濫用することがないよう留意しなければならない。」を文言どおり遵守し、最低限、申出人が納得のいく十分な説明および理由を附していただきたい。

第5 実施機関の説明とそれに対する異議申立人の意見

1 本件開示請求対象公文書について

 本件請求は、特定の個人である異議申立人(以下「申立人」という。)が、鳥取県公安委員会に対して、特定の個人(鳥取県警察本部警務部総務課課員)を指定して懲戒処分請求を行ったその処理状況がわかる公文書の開示を求めているものである。

2 公文書開示請求拒否決定とした理由について

(1) 鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号(個人に関する情報)該当性について

 鳥取県情報公開条例(以下「条例」という。)第9条第2項第2号は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがあるものについては、同号ア、イ、ウ、エに該当する情報を除き、これを非開示と規定している。
 本件請求の対象とされた公文書は、当該公文書の存否を答えるだけで、
 ・特定の個人への懲戒処分請求及び同人の懲戒処分の有無
   ・特定の個人が、平成26年8月3日に司法警察職員懲戒請求書を提出したか否かの事実
を答えることと同様の結果となり、これらは個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、個人の権利利益を侵害するおそれがある情報と認められるので、条例第9条第2項第2号に該当する。

(2) 本人による自己の情報の開示請求

 条例第5条に、「何人も、実施機関に対して、当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる。」と規定されている。
 したがって、情報公開制度は、何人に対しても、目的いかんを問わず公開請求を認める制度であるが、請求者の自己の情報であることを理由に特別に公文書の開示を受けることまで認められているものではない。

(3) 公文書の開示請求拒否について

 条例第12条第5号は、公文書の存否の事実により特定の情報の存在が明らかになる開示請求があった場合で、当該公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、公文書の存否を明らかにしないで、開示請求を拒否することができる旨を規定している。
 本件請求の対象とされた、個人を特定した「懲戒処分請求書の処理状況がわかる文書」に関する公文書開示請求がなされた場合に、もし開示請求を受理すれば、当該個人に懲戒処分請求を受けた事実がない場合には公文書不存在決定をすることとなり、懲戒処分請求を受けた事実があれば、個人情報であることから、非開示決定をすることとなる。
 このように、公文書不存在決定又は非開示決定をすることにより、当該公文書が存在しているか否かを答えることになり、その結果、懲戒処分請求の有無及びそれに基づいて判断された懲戒処分の有無という個人情報を開示してしまうことになる。また、同様に、特定の個人である申立人が、懲戒処分請求を行った事実が明らかとなることから、開示請求を拒否したものである。
 本件請求において、これを拒否することによって保護される個人の権利利益と開示されることによって確保される公益を比較しても、開示することによって確保される公益が、拒否することによって保護される個人の権利利益に優越する特段の事情は認められない。

3 その他

 本件公文書開示請求は、郵送により送付されたものである。公文書開示請求の記載内容等を確認するため、本人に文書を送付したが、これに対する返答がなかったものである。
 なお、申立人に対しては、決定文書とともに「本人に関する文書については、個人情報開示請求により請求可能である。」旨、鳥取県個人情報保護条例について教示をしている。

〔異議申立人の意見〕

 (2) 鳥取県公安委員会は、懲戒処分請求を行った処分状況を、「特定の個人」の個人情報を盾に、公文書開示決定拒否決定をされました。
 平成11年3月12日交付の鳥取県個人情報保護条例では次のように定義されています。

 第16条 実施機関は、開示請求に係る個人情報に次の各号に掲げる情報のいずれかが含まれている場合を除き、当該個人情報を開示しなければならない。
 (3) 開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を侵害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
 ウ 当該個人が公務員等である場合において、その職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の職の名称その他職務上の地位を表す名称及び氏名(当該公務員等の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報として規則で定めるものを除く。)並びに当該職務遂行の内容

 これを読み解くと、対象公務員に対しては「特定の個人」の情報という理論を用いて情報公開を拒否することはできないことになります。
 また、鳥取県情報公開条例では次のように規定されています。
鳥取県情報公開条例の趣旨、解釈及び運用
   第9条第2項第2号(個人に関する情報)関係
 9  「ただし書ウ」について
        「公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第2項に規定する特定独立行政法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員、地方独立行政法人の役員及び職員並びに公社の役員及び職員、全部出資法人の役員及び職員並びに指定管理者の役員及び職員をいう。)の職務の遂行に係る情報(指定管理者にあっては指定管理者が管理を行う公の施設の管理の業務に係る情報(以下「指定管理情報」という。)に限る。)の地位を表す名称及び氏名並びに当該職務遂行の内容」については、行政の説明責務の観点から原則としてこれらの個人情報を開示することとしたものである。
   公務員には、一般職、特別職、常勤職員はもとより、非常勤職員及び臨時職員をも含むものである。

   鳥取県公安委員会が主張される個人情報および個人の権利利益は、鳥取県警察本部へ属する公務員に対するものであり、ここでは該当しない。
   単純に、情報公開条例たるものは、「原則公開」という趣旨である。
   組織で働く公務員の個人情報により開示請求を拒否してしまえば、その範囲は多大なものとなり、情報公開条例の根幹をくつがえしかねない。

第6 本件異議申立審議の経過

 平成26年11月21日 諮問書を受理
 12月18日 実施機関が理由説明書を提出
 平成27年1月13日(14日受理) 異議申立人が意見書を提出
 5月27日 審議

    ※  異議申立人は、本審議会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。

第7 審議会の判断

 鳥取県情報公開条例第12条は公文書の存否に関する情報の規定であり、第1号から第5号に該当するときは、公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができる旨を定めている。
 本件開示請求を見ると、異議申立人は、自己の提出した司法警察職員懲戒請求書の処理状況が分かる書類の開示を求めており、これについて開示等の決定を行ったときは、異議申立人が司法警察職員懲戒請求書を県警に提出したという事実を開示すること、即ち非開示情報(鳥取県情報公開条例第9条第2項第2号に規定する個人情報)を開示したのと同様の結果を生じることとなる。
 よって、実施機関が鳥取県情報公開条例第12条第5号を根拠に開示請求拒否の決定を行ったことは、適切な判断といえる。
 なお、これら情報は、個人情報開示請求であれば開示されたものと考えられるが、実施機関は、異議申立人に対して説明文書の送付により当該事項の教示に努めており、開示に係る事務に問題はなかったものと考える。

  

最後に本ページの担当課    鳥取県 地域社会振興部 県民課
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