防災・危機管理情報


平成28年10月18日
総務部長

 日本経済は雇用・所得環境に改善が見られるものの、個人消費や民間投資は力強さを欠いた状況にあり、新興国経済の陰りや英国のEU離脱などの要因による世界経済の需要の低迷、成長減速のリスクにさらされている。加えて、不可避的に社会保障費が増加する中、その財源となる消費税の増税が再延期されるなど、県政を取り巻く情勢は、一層流動的で不透明なものとなっている。
 これに対し、政府は成長と分配の好循環を全国津々浦々まで波及させ、地方創生を本格展開するとし、経済対策を講じることとしている一方、行財政改革を断行することとし、地方の一般財源確保が新年度どのようになるか、未だ不透明な状況にある。
 このような中、地方創生や経済・雇用の安定、安心・安全な暮らしの実現をはじめとする県政の諸課題に向けて、平成29年度当初予算において機動的かつ効果的な政策を展開しなければならない。
その際、「財政誘導目標」に基づき、将来への負担を増やすことなく持続可能な県政運営への道筋を堅持することとし、そのために行財政改革をさらに推進するとともに、スクラップ・アンド・ビルドの徹底など事業の大胆な見直しと重点化を図ることとする。
 ついては、以下の事項に留意されたい。
  

1.基本的な考え方

  

(1)県財政を取り巻く厳しい状況

 地方財政については、「経済財政運営と改革の基本方針2015」において、平成30年度までは地方の一般財源総額について実質的に平成27年度の水準を確保するとされているものの、同方針に定められた「経済・財政再生計画」においては国の取組と基調を合わせた歳出改革に取り組み、経済再生に合わせ危機対応モードから平時モードへの切り替えを進めるとされており、今後、地方交付税や国庫支出金、公共事業などについて厳しい議論が行われることが想定される。
 特に、地方交付税については、景気回復により地方税収の増加が見込まれることに伴い交付税総額の抑制が見込まれるとともに、プライマリーバランスの改善による財源余剰が生じているのではないかとの指摘があるなど地方に対して厳しい目が向けられている状況を踏まえれば、今年度の地財折衝は一層厳しい局面が予想される。
 加えて、本県においては社会保障に係る地方負担が増加の一途を辿るとともに公債費負担がピークを迎えるなどの財政圧迫要因を抱えており、今後も極めて厳しい財政状況を想定しなければならない状況である。

(2)徹底した事業見直しと重点化による重要施策の積極的な推進

 平成29年度は、「鳥取県元気づくり総合戦略」に掲げた基本目標の実現に向け、地方創生の取組を一層加速させるとともに、その実現に向けた歩みを確かなものとするため諸施策に意欲的に取り組むこと。
 これに向け、県民の皆様からの意見等を踏まえ、機動的に、最小の経費で最大の成果を導く効果的な事業の立案を行うこと。
県財政を取り巻く状況が極めて厳しくなると見込まれる中で、重点施策に県の資源(財源・人員)を傾注する必要があるため、事業のスクラップ・アンド・ビルドをこれまで以上に徹底すること。
 その際、単に事業予算だけではなく、事業遂行する際の業務人役にも着目し、組織全体でのトータルコストの膨張は、厳に慎むこと。
 したがって、予算要求にあたっては、意義や効果の薄れた事業の見直しや類似事業の統廃合を積極的に行うため、新規事業はもとより全ての事業について費用対効果、必要性・緊急性等を検証するとともに、PFI・PPPも含めた公共関与のあり方、持続可能性、国や市町村との役割分担などの視点で、思い切った事業の取捨選択を行うこと。
 以上のことから、特に継続事業に関して、事業目的の明確化及び、成果の説明(定量的評価又は定性的評価)が困難な事業については、廃止を検討すること。

(3)市町村の役割への配慮

 県と市町村はイコールパートナーであるとともに、市町村は住民に一番身近な地方公共団体であり、住民生活に密着した行政を行っていることに鑑み、県の施策実施に市町村の協力をあおぐに当たってはその自主性を尊重すること。
 特に、各市町村の地方創生が実現し、さらに県全体の地方創生へとつなげていくためには、県と市町村がこれまで以上に連携・協力して取り組んでいくこと。
 したがって、市町村を通じて実施することが現実的、効果的と考えられる施策については、市町村における適切な判断に基づき予算措置等が円滑に行われるよう、平成29年度当初予算編成に当たり、十分に事前の相談・調整を行うこと。
 なお、既存施策であっても、事業の実施状況や現場、市町村からの意見等を踏まえて総点検を行い、市町村の関与や負担のあり方について検証を行うこと。
  

2.要求に当たっての重点留意事項

  

(1)「県民とともに作る予算」

 本予算は「県民とともに作る予算」であり、「鳥取県民参画基本条例」の趣旨を踏まえ、事業の企画立案に当たっては、積極的に現場に出向き、現場を担う方々や県民からの声、各種団体からの意見や提言に素直に耳を傾けながら事業を検討すること。特に、地方創生を先導するための効果的な対策を具体的に打ち出すためには、現場の方々の意見や提言が極めて重要であることから、様々な声に対して県の立場で政策目的を明確化し、事業の効果性も十分念頭に置きながら検討すること。

(2)鳥取県産業振興条例、障害者優先調達推進法及び鳥取県手話言語条例等を踏まえた対応

 県内産業の育成による県内経済の発展と県民の雇用の確保を目的に制定された「鳥取県産業振興条例」の趣旨を踏まえ、県産品・県産材のより一層の活用に努めるほか、県内在住・県出身の人材、県内事業者の活用を意識した事業の組み立てを検討すること。
 また、障がい者就労施設等の受注の機会を確保するために制定された「障害者優先調達推進法」や「鳥取県手話言語条例」の趣旨を踏まえ、障がい者就労施設等から優先的に物品及び役務を調達するよう配慮することとし、予算積算時に障がい者就労施設等から見積書を徴取するなど、積極的かつ計画的な発注につながるよう努めること。
 さらに、不特定多数の県民の参加が見込まれるものについては手話通訳者及び要約筆記者の配置に必要な経費を見積もるなど、ろう者が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう配慮すること。

(3)県政モニタリング事業における意見の反映等

 「県政モニタリング事業」については、翌年3月に意見をとりまとめ、公表し、その後の事業実施や予算に反映することとしているが、最終のとりまとめ・公表に至るまでの途中段階での意見等についても可能な限り反映した要求を行うこと。
 また、経費の積算にあたっては、27年度決算における事業ごとの不用額実績に着目し、過大な見積もりとならないよう精査した上で予算要求すること。

(4)国の制度・施策に関する情報収集の徹底

 国の予算編成は、「平成29年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」において、裁量的経費を10%削減する一方で、「新しい日本のための優先課題推進枠」を設けており、「ニッポン一億総活躍プラン」、「経済財政運営と改革の基本方針2016」及び「日本再興戦略2016」等を踏まえた諸課題について予算編成過程において検討するとされ、真に必要なニーズにこたえるためゼロベースでの精査、施策・制度の抜本的見直しや各経費間の優先順位の厳しい選択が行われることが予想される。
 したがって、様々なチャンネルを使って国の動向等についての情報収集・分析を徹底し、的確に予算要求に反映させるとともに、国庫補助金などの財源措置についてもできる限り適切な見積もりを行った上で要求すること。

(5)NPO等との協働・連携事業の的確な対応

 NPO等との協働・連携事業を立案する場合は、所要経費の積算において、実施する事業の内容に応じて人件費を的確に見込むこととするほか、事業実施に当たっての諸手続などで相手方に過度な負担を課すことのない仕組みを検討すること。
  

3.その他の留意事項

  

(1)政策戦略会議

 予算査定に先駆けて「政策戦略会議」等を開催し、戦略的課題や部局横断的な課題に対して、統轄監を中心とした幹部間の連携により方針を検討することとし、その過程においても、県民・団体等の意見交換を積極的に実施するとともに、とっとり元気づくり推進本部各チームによる施策立案を重視すること。
 政策戦略会議において検討する「政策戦略事業」については、年内は立案段階として十分な議論・検討、事業化に向けた論点整理を中心に行う期間に充て、計数等を精査した予算要求・査定は1月から行うこと。
 また、1月を「政策戦略事業」を中心とした予算編成に充てるため、これを除く「一般事業」については先行して予算要求を行い、原則として財政課において年内に計上案を整理の上、1月初めに計上案をホームページで公開することとし、「一般事業」計上案については知事レビューにおいて最終的に確定するものとすること。

(2)予算編成過程の透明化

 予算要求段階から予算編成過程を公開するので、事業名も含め県民へのわかりやすさを第一に考えて要求書等を作成することとし、特に用語については、いわゆる行政用語や専門用語、外来語やカタカナ語、略語などで県民にわかり難い表記がないかどうかを十分に注意すること。

(3)時間外勤務の縮減に向けた作業の効率化

 予算要求に伴う時間外勤務を縮減するため、財政課が行う要求課からの聞き取りについては、原則として終業時刻までに終了すること。
 また、予算要求資料については、データベースによる情報共有化や既存資料の活用を徹底するなど、要求課の資料作成の省力化や関係課の作業の効率化に努めること。

(4)日々の業務改善

日々の業務改善は、無理・無駄がなくなり、県民のためになることはもちろん、職員の負担軽減にも繋がることから、予算要求のために本庁と地方機関との間で行われる資料作成などにおいて、例年どおりの前例踏襲による無駄な作業が生じていないかなど、すべての作業を再点検すること。

(5)新たな財源の確保

 県有資産の処分、県有資産の有効活用による広告料収入の確保、受益と負担の公平の観点から費用を徴収すべきものがないか等、新たな財源の確保について積極的に検討すること。

(6)助成財源の積極的活用

 国庫の財源措置のみならず、各種公益法人等からの事業内容に応じた助成も含めて、当該助成制度が本県の実情や具体的事業に適合したものかどうかを十分に検証した上で積極的に活用すること。
 なお、有利な助成財源があることのみをもって必要性・緊急性の低い事業を行うことがないようにすること。

(7)環境への配慮とコスト意識

 パリ協定発効をにらみ、環境方針を尊重し、グリーン購入の推進、ペーパーレス化の推進等について、予算要求段階から配慮するとともに、環境への負荷を軽減し、かつ、コスト削減に繋がるようなアイディアは積極的に取り入れて、事業を検討すること。
  

    

PDF版(平成29年度の当初予算編成等に当たっての留意事項)
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