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昭和56年(1931)8月24日、鳥取市青谷町北河原で採集

歌詞

唐土の鳥が 日本の島に渡らぬ先に
ナズナ 七草そろえて 杓子の上持って スットコテンとはやいて ホーイ ホイ
(伝承者:明治45年生まれ)

解説

 正月6日の晩、七草を神に供え、悪いものを鳥に例えて鳥追いをする行事が昔は盛んに行われていた。鳥取市末恒の女性(1902年生)の話では、親の代くらいまでそれを行ったといい、父がまな板を餅搗き臼の上へ持って行き、七草を載せ、スリコギでがちゃがちゃいわせながらしたという。そのときにはこの歌をうたい3回繰り返したという。

 同じく鳥取県東部の鳥取市福部町左近出身の女性(1906年生)は、トリノスの上へ七草を載せ、亭主がシャモジ、火箸、スリコギでたたきながらこの歌をうたったと語っている。

 似たようなことだが、琴浦町成美出身の女性(1920年生)の話では、6日の夜、豊作を祈って鳥追いをした。トシトコさんにおじいさんの採ってきた春の七草のほか、スルメ、餅、スリコギとご飯シャモジ、火箸などの供えものをして、子どもたちが唱えた。なお、七草は芹を七枚採って来ることによって代用していた。また、おじいさんは30年くらい前に亡くなったので、以後はしていないという。

 この歌の歌い出しに注目すると、二つに分かれるようだ。一つは鳥が登場しても「唐土の鳥…」とはじまるものと、他方は「日本の鳥…」とはじまるものとである。鳥取県では東部に「唐土の鳥…」とうたい出すものが多く、「日本の鳥…」とうたい出すものは中部や西部に多かったようである。米子市尾高のものをあげておく。

日本の鳥は唐土へ渡り 唐土の鳥は日本に渡り
渡らぬ先に 芹 ナズナ スズナ スズシロ ゴギョウ タブラク ホトケノザ
七草そろえて ヤッホー ホィヤー(伝承者:女性・1900年生)

 一つ一つ七草の名前を挙げながらうたうという丁寧な詞章である。

 ところで、島根県でも鳥取県と同様の二つのタイプがある。ここでは松江市玉湯町別所の例を紹介しておく。

唐土の鳥が日本の土地へ 渡らぬうちに
七草そろえて ステテコはやいて ヤー ヤー ヤー ヤー(伝承者:男性・1913年生)

 いずれにしても歳神様の滞在している正月に、聖なる数の七つの草を調理して作った七草粥を食べたり、鳥追いのような行事を行うことによって、歳神様に来たるべき農作業の豊作をもたらしてくださるよう、人々は真剣に祈っていたのである。


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