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昭和61年8月2日、琴浦町高岡で採集

語り

 ホトトギスの鳴く声をよく聞きますと、それは「オトトコソ、オトトコソ(弟こそ、弟こそ)。」というふうに聞き取れますわ。その由来の話ですよ。
 昔、たいへん仲のよい二人の兄弟がありました。
 ところが、あるとき、兄さんが病気になって床についてしまいました。
 弟は、「これはまあ、えらいことになった。何とかして兄さんに元気になってもらわねばならん。」というので、隣の人に聞いたら、「山に行って山芋を取ってきて、それを食べさせたら精がつくだないか。」と教えてくれました。
 そこで弟は、早速、毎日毎日、山に行って山芋を掘ってきては、兄さんに精がつくように食べさせてあげました。
 兄さんも、たいへんに喜んでそれを食べさせてもらっていました。
 そうしながら、「こがあにうまもんがあるだか。弟はおれにうまもんを食わせるだが、あいつは山へ行ってこれを取って来るだけん、まんだうまいところを食うとるだらぁ。」と思っていました。
 あるとき、弟が寝ているときに、その弟を殺して腹の中を見たら、弟は山芋の首しか出てきませんでした。
 つまり、山芋の小さいところばっかり食べていたということが分かったのです。
 そこで兄さんは、「弟は芋の一番屑のところを食って、おれにはこがいないいところを食わしてごいとっただが。」と思って、弟を殺してしまったことをとても悲しんで、弟にたいへん感謝しながら、いつの間にかホトトギスになってしまいました。
 そうして大空を飛び飛び、「オトトコソ、オトトコソ……」と鳴くのだそうです。
 そして、ホトトギスは八万八声鳴かなければ恩送りができないとも言われています。(語り手:昭和3年生まれ)
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解説
 この話は関敬吾『日本昔話大成』で「動物昔話」の「小鳥前世」譚の中に位置づけられている。類話は鳥取県内のあちこちでこれまでにも収録されているが、おおむね兄が弟の腹を割く形で話が展開している。ただ、岩美町田後では、反対に盲目の弟が山芋を取ってきて、おいしい方を食べさせてくれている兄を邪推して、その兄の腹を割く形になっており、したがって鳴き声も「弟恋しい。」ではなく、殺された兄が鳥になって「オットト(弟)見たか。」と鳴くことになっている。また、この鳴き声については、県内でも多少のばらつきが見られる。本話と同じ「おととこそ」とするところは、同町別所・山川・国実・古長など。「おとと来たか」が、鳥取市国府町神垣、同市用瀬町松原・河原町河内、倉吉市尾田、日南町など。「弟まだか」が智頭町穂見であり、少し変わったのでは若桜町大野で「親ののどを掘らにゃよかった。アオアオ」である。


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