語り
昔なあ、あまんがえるちゅうやつがおって、親がなあ、「山へ行け」って言うと川へ行くし、「川へ行け」って言うと山へ行くし、何でも反対ばっかりしよっただ。
そうしたらなあ、親が死ぬるときになあ「おれが死んだらなあ、川の縁(へり)ぃいけてごせえよ。」って言ったら、子ども蛙が「うん、うん。」て言いよったけど本当に「親が死んだら、おりゃあお母さんが生きとる間にたるほど反対ばっかりしたけえ、今度ぁ本当にお母さんの言う通りしてあげにゃあいけん。」て言って、川の縁ぃいけた。そうしたら雨が降るたんびに「ああ、お母さんが流れりゃせんか。」ちってガイガイガイガイ鳴くて。それが死んでしまってからのことだけえ、後の祭りで何にもならだったって。昔こっぽり。(語り:明治40年生まれ)
解説
蛙が雨が降ると鳴く習性を巧みに昔話にしたもので、各地で語られている。