語り
とんと昔があったげな。狐と狸が住んでおりました。
狐と狸が「だまし比べをしよう。」ていうことになりまして、それで、「いついつ、お殿さまが通られるから。」っていうことで、それは狐の方が言い出したようで、で、狐はその日を知ってて言い出したと思うんですけど。
そいから当日になりました。さあ、狸は、「狐は上手に化けたかなあ。」と気になるし、見に行ったわけなんですよねえ。約束もありますし。
さあ、本当の殿さまが通りました。行列が通って行きます。狸はすっかり感心してしまって。
「ほんのやあななあ。ほんのやあななあ。」って、喜んで見てたそうですけど、お殿さまの目にふれて、「無礼者が。」ということで、手打ちにされたっていう話。
昔こっぽり山の芋。(語り部:大正10年生まれ)
解説
この話は、関敬吾博士の『日本昔話大成』によると、本格昔話の「人と狐」の中の「狐の化け比べ」のい分類される。米子市では藤内狐についての伝説がいろいろと分布しており、中にはこのように戸上山の藤内狐と狸の話に伝説化されているのもあり、おもしろい。