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昭和54年(1979)10月6日、三朝町曹源寺で採集

歌詞

亥の子さんの夜さ 祝わぬ者は 鬼を産め 蛇産め 角の生えた子産め あー 餅ごししゃれ 餅ごしゃれ

(伝承者:女性・明治35年)
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解説

  旧暦十月の亥の日は、多くのところで炬燵を出す日といわれている。また亥の子の神は農神とされ、この日大根畑へ入ってはならない。大根がハシレル(実って割れる)音を聞くと悪いからという伝えも多い。島根県の鹿足郡柿木村椛谷で聞いたところでは、初亥で神が田から大根畑まで帰られ、中亥で戸口の敷居まで帰られ、三番亥で神棚に上がられ、トシトコサマになるとされている。
  この日の晩には各地で、子どもたちが歌をうたいながら亥の子搗きをして回り、餅などをもらって歩いたりしていた。
  鳥取県三朝町曹源寺の男性(1907年生)は、この日、子どもたちは藁づとの中芯に茗荷を入れて固くくくり、小学校3、4年生ごろの子ども3、4人ぐらいで家の門をついて回り、餅を三つくらいずつもらって帰ったと話していた。またこの日はオハギを作ってもらって食べたとする大山町樋口の例(女性・1908年生)もある。そして米子市尾高出身の女性(1900年生)は、この日初めて炬燵を出したが、炬燵に当たりながらこの歌はうたったものだった、と話していた。
   この歌の詞章は、各地とも大同小異であるが、島根県では、やや違ったものも存在していた。まず隠岐島西郷町今津では、

一つ 二つ 三つ 亥の子祝うかの 祝わぬかの

とうたいながら家の門へ行くが、「祝います」と祝ってくれた家では、

亥の子を祝って よい旦那 ゲン蔵 金蔵建て並べ 繁盛しょ 繁盛しょ

と、誉め口上を述べるが、祝わない場合には、

この子の旦那は くそ旦那 亥の子を祝わな くそ旦那 ジンベ コンベ
角の生えた子産め
(伝承者:女性・1898年生)

と悪口を言い走って逃げたものだとのことである。
  また、島根県八束町波入で例えば酒屋さんの前では、

ここはどこのかど 酒屋の前だ 酒がツコ(ツッコウ)売れますか なかなか売れますよ それは繁昌 繁昌(伝承者:女性・1887年生)

 こう誉めるものだったとのことである。「ツコ(ツッコウ)」というのは、「少々」という意味という。
  亥の子の日に各家を訪れるのは、幸せを授ける神々だったのである。


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