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昭和63年(1988)8月22日、三朝町吉尾で採集

歌詞

お千さんとお万さんと
お手ひき合わせてお城まで
お城の後ろは高後ろ
一段上がりて
二段上がりて
三段上がりて
みなみな見れば
よい子よい子が三人ござる
一でよいのが一呂兵衛の娘
二でよいのが次郎兵衛の娘
三でよいのが酒屋の娘
酒屋一番 大伊達こきで
下にゃ白無垢
中びにゃ綸子(りんず)
上にゃ桃色 総紅鹿子(そうべにかのこ)
雪駄ちゃらちゃら
花見に行きゃる
花見若い衆に
抱きとめられて
おしゃれ離せよ
縁切りゃしゃんな
帯の切れたは結びもなるが
縁の切れたは
結ばれぬ 結ばれぬ
(伝承者:明治35年生まれ)
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解説

 まるで江戸時代の錦絵でも見ているような、絢爛(けんらん)豪華な風景が浮かんでくるようである。
 これは手まり歌であるが、以前の手まり歌には、このような内容がよく見られた。歌の初めは「お千さん」とか「お万さん」というように、わらべ歌にはよく登場する名前である。しかし、二人はこの歌の中では、単なる導入部の役割を持つだけである。
 主人公は後半の酒屋の娘なのであり、彼女が着飾って花見に出かけたところ、そこで遭遇する出来事にスポットが当てられている。この酒屋の娘は「大伊達こき」とある。これは「人目に立つことを好むタイプ」というくらいの意味であろう。また、中に着ている「綸子」であるが、しゅす織りの地にその裏組織で地紋を織りだした絹織物のこと。「総紅鹿子」というのは、全体が赤い色の鹿の子模様をした羽織のことかと思われる。したがって、余りにも目立った娘なので、つい若い衆につかまってしまったというのである。
 ところで、わたしは先に「以前の手まり歌にはこのような内容がよく見られた」と記したが、ここらでまず鳥取県東部地区の、そのような例を紹介しておこう。佐治村で聞いたものである。

うちの隣の庄屋の娘
庄屋娘は姉妹(おとどい)ござる
姉は二十三 妹は二十歳(はたち)
二十歳なるけど
まだ鉄漿(かね)つけぬ
鉄漿もつけどき
嫁入りもしどき
雪駄ちゃらちゃら
花見に行けば
花見若い衆に
抱きしめられて
帯の切れるは大事はないが
縁の切れるは また大事 すっとことんよ ちょっと渡(わった)りしょ(伝承者:大正4年生まれ)

 年頃の主人公の娘が、若い衆に抱きとめられる筋書きから、そのとき娘の若い衆に対して文句をいうその意見が基本的に共通しているのである。このような筋書きを持った歌は、隣の島根県でもわたしはいくつも聞いている。


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