歌詞
お月さんなんぼ 十三ここのつ そりゃまんだ若い 若はござらぬ いにとでござる
行きはよいよい もどりはこわい歌い手(伝承者:明治43年生)
解説
この詞章の中で「そりゃまんだ若い」とある点で、伯耆型に属していることは間違いない。しかしながら、どういうわけか、東伯郡の「お月さんなんぼ」は、なぜか輪くぐり遊びのおりにうたわれる場合が多い。ここ北栄町に限らず、三朝町・湯梨浜町(旧羽合町・泊村)などのいずれもが、みな輪くぐりに歌われていた。それぞれの例あげておく。まず三朝町下西谷のもの。
お月さんなんぼ 十三ここのつ そりゃまんだ若いぞ 若はござらぬ さっさとくぐりゃ
行きはよいよい 帰りはこわいぞ (伝承者:明治34年生)
湯梨浜町宇野のもの。
お月さんなんぼ 十三ここのつ それはまんだ若いぞ 若はござらぬ どんどとくぐれ (伝承者:明治35年生)
最後に湯梨浜町原のもの。
お月さんなんぼ 十三ここのつ そりゃまんだ若いぞ 若はござらん どんどとくぐれ (伝承者:明治38年生)
遊び方を説明すると、二人の子供が向き合い両手を合わせ門を作って立つ。他のみんなはこの歌をうたいながら、その下をくぐり抜けるが、最後の「もどりはこわい」、あるいは「どんどとくぐれ」のところで門は下におろされ、門の両手の中に挟みこまれた子供が、門の一人と交代して次の門になるという遊びである。これはよく知られた、
通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの細道じゃ 天神様の細道じゃ
ちょっと通してくだしゃんせ ご用のない者通しゃせぬ この子の七つのお祝いに
お札を納めにまいります 行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ
この歌に添った遊びと同一なのである。
東伯郡の歌だけが、まるで申し合わせたように、なぜ輪くぐり歌として用いられているのか分からないが、ともかく、多くの例が、そうなっていたことだけは事実であった。
これは東伯郡という地域が、近隣の地域と比べて歴史的にも文化交流に仕方に、どこか大きな特色があった証拠だとは、想像できるが、まだ不勉強なわたしにとって、具体的にはその理由が解明できていない。