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昭和61年(1986)8月4日、琴浦町箆津で採集

歌詞

船上山寺の山に雪が降り出しました。そうすると山のお寺さんは、里の方に降りてくる。里の人々はそれを見まして「山から坊主が降りてくる 大寒 小寒 山から坊主が降りてくる」そうして山陰の冬もぼちぼち本格的になるということでございます。(歌い手:明治40年生まれ)
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解説

 寒くなってくると、このように「大寒、小寒」で始まる歌を、よく子どもたちはうたっていた。次は三朝町の歌である。

大寒 小寒 小寒に行ったら 芋の煮たのを食ぁさった(歌い手:明治40年生まれ)

 寒さを擬人化してこううたっており、類歌は多い。初めに挙げた単純な歌の同類はないかと、眺めてみると大田市で一例だけ収録していた。

大寒 小寒 大寒 小寒 山から小僧が泣いて来た 何と言って泣いて来た 寒いと言って泣いて来た 大寒 小寒(歌い手:昭和54年生まれ)

  ところで、文献には江戸時代のものに同類が見られる。古いところでは、享和3年(1803)に序のある宗亨著『阿保記録』に次のようになっていた。

大寒小寒、山カラコゾウガナイテキタ

  大田市の歌にそっくりであろう。琴浦町の歌にも関連がありそうである。また、幕末期の江戸のわらべ歌やわらべ言葉を収録したとされる岡本昆石編「あづま流行時代子供うた」は、明治27年(1894)に出された『続日本歌謡集成』に収められているが、

大寒むこさむ、山から小僧が飛(とん)で来た、何(な)ンとて飛(とん)できた、寒いとツて飛(とん)で来た。

 このようになっている。さらに天保初年(1830年)頃に刊行されたと思われる高橋仙果著『熱田手毬歌』では、

ヲヽさぶこさぶ、山からおやぢがないて来た。

となっている。
 こうして見れば、昔から子どもたちは、寒さを感じると、平地よりも高地の方がまだ寒さが厳しいという常識を踏まえて、このようにうたっていたのである。


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