歌詞
一つとせ人も通らぬ山道を おさよと源兵衛が通(とお)たげな 通たげな
二つとせ二股(また)大根は離れても おさよと源兵衛は離りゃせの のう 源兵衛さん
三つとせ見れば見るほど よい男おさよが惚れたも無理はない のう 源兵衛さん
四つとせ用のない街道二度三度 おさよが見たさに逢いたさに のう 源兵衛さん
五つとせいつも流行らぬかんざしを おさよに挿させて姿見る のう 源兵衛さん
六つとせ無理に締めたる腹帯を 緩めてください 源兵衛さん のう 源兵衛さん
七つとせ何も言いまい語るまい おさよが見たさに逢いたさに のう 源兵衛さん
八つとせ焼けた屋敷に小屋建てて おさよと源兵衛さんが所帯とる のう 源兵衛さん
九つとせここで添われにゃどこで添う 極楽浄土の道で添う のう 源兵衛さん
十とせ遠いところに行かいにも さい前さんの肌に添う のう 源兵衛さん(伝承者明治36年生)
解説
数え歌形式のこの歌は、高齢の方からしか聞けない。以前の子供たちは意外に艶っぽい内容の歌をうたっていたようである。
中には、倍の二十番までうたわれていたところもあった。その例として鳥取県智頭町波多のものを十一番から紹介しておく。
十一せ 十一せ いちいちわたしが悪かった こらえてください
源兵衛さんの源兵衛さん
十二とせ 十二とせ 十二薬師に願掛けて おさよの病気が治るよに の 治るよに
十三せ 十三せ 十三桜は山桜 おさよと源兵衛は色桜 の 色桜
十四とせ 十四とせ 死出の山辺は針の山 手に手を取って二人連れ の 二人連れ
十五とせ 十五とせ 十五夜お月さんは夜に余る おさよと源兵衛は
目に余るの 目に余る
十六せ 十六せ 十六ムサシを指すときにゃ 教えてくだされ
源兵衛さんの源兵衛さん
十七せ 十七せ 質に置いたる帷子を請けてくだされ 源兵衛さん の 源兵衛さん
十八せ 十八せ 十八蠍(さそり)は垣をはう おさよと源兵衛は ねやをはうのねやをはう
十九とせ 十九とせ 十九嫁入りはまだ早い せめて二十歳(はたち)か二十一か
二十(はたち)とせ 二十とせ 機(はた)もだんだん 縞機を
これこそ源兵衛さんの 夏羽織の 夏羽織(伝承者明治40年生)