歌詞
源(げん)がばばさん 焼き餅好きで 宵に九つ 夜食にゃ七つ
今朝の茶の子にゃ 百七つ 百七つ(歌い手:明治45年生まれ)
解説
風変わりでユーモアを感じさせる内容を持つ手まり歌である。鳥取県西部には、ときおり同類を聞くことがあった。次は大山町の歌である。
源がばばさん焼き餅好きで ゆんべに九つ 夜食に七つ
今朝の茶の子にゃ 百七つ
一つ余って袂(たもと)に入れて 船に乗るとてポテンと落ちて
取るはきょうとし 取らぬも惜しし(歌い手:明治30年生まれ)
この方では、初めの歌が「百七つ」で終わっている後へ、更に物語がつけ加えられて、新しい展開を見せている。なお「きょうとし」は、「恐ろしい」の方言である。
同類を調べると、はるか離れた関東地方の千葉県にもあった。出典は三省堂発行の北原白秋編『日本伝承童謡集成』第3巻 遊戯唄(上)で、次のように出ていた。
おらがばばさまは かき餅すきで、 ゆうべ呼ばれて 十ばけ食らて、
一つのこして袂へ入れて、 お馬に乗るとき すとんと落した
どこで落した 松戸の宿で、松戸宿では 誰それ拾った、
松戸宿では 長四郎ひろった、長四郎くれやれ 女房になるぞ、
わしが女房は 三人ござる、
一人姉さん太鼓が上手、一人姉さん伊達者でござる、五両で帯買うて
三両で絎(く)けて、絎目絎目に 七房さげて、今年はじめて花見に出たら、
寺の和尚さんに抱きとめられて、よしやれ放しゃれ、帯きりゃさんな、
帯の切れたは大事もないが、縁のきれたは結ばれぬ。
これには千葉県という県名が記されているだけで、細かく市町村名については触れられていないが、それにしても後半の展開が愉快である。
ここでは類歌を紹介する余裕はないが、しかし、島根県の石見地方では、この後半部分が独立した手まり歌が、ちゃんと存在しているのである。