歌詞
げんこつ山のげんちゃんが おっぱい飲んで ねんねして
だっこして ねんねして ジャンケン ポイ(伝承者:昭和29年生まれ)
解説
同類は全国的に広くうたわれている。歌の詞章に合わせてその動作を行なってゆき、最後はジャンケンに移行して鬼を決める。その意味からは「手遊び歌」とか、「鬼決め歌」と分類することもできる。『八東町誌』によれば、同類が次のように変化している。
ごんけつ山の、たぬきさん、おっぱいのんで、ねんねして、
だっこして、おんぶして、またあした
冒頭の歌の同類であることには、どなたも異論はなかろうが、ただ、この方は動作を行うことが目的でうたわれ、初めの歌のようにジャンケン前奏曲ではない。そこのところが違っている。これが島根県になると斐川町でよく似たものが見つかっている。
ごんけつお山の たぬきさん おっぱい飲んで だっこして
おんぶして またあした(伝承者:昭和7年生まれ)
子どもは常にエネルギッシュである。したがって元気よく動き回ることを好む。そのようなことから、ストレートに動作そのものを楽しむ歌としてうたわれていたのであろう。
同じように詞章に合わせて動作を楽しむ歌は、この他にいろいろある。少し変わったものとして、鳥取県気高町の「鬼決め歌」を紹介しておく。
俵のネズミが米食って チュウ チュウ チュウ チュウ
お父さんが呼んでも お母さんが呼んでも 行き行きなすよ トン
山から 蓑着て笠負て通たもんが 鬼だった(伝承者:大正元年生まれ)
この歌の「俵のネズミが米食ってチュウチュウ…」から「…行き行きなすよ…」までどなたもおなじみであろう。しかし、後半部「とうざの山から、蓑着て笠負て、通たもんが鬼だった」のところは、当地独特の詞章といえる。とうざの山から蓑を着て、そして笠を背に負いながら通って来る者の正体が鬼だというくだりから考えて、この鬼は子孫の住む現し世に、時おり姿を見せる祖霊の色彩を残しているもののように思われる。民間信仰を踏まえた歌として、その古さに注目しておきたい。
この歌の遊び方であるが、子どもたちが輪になって手を握って小口を合わせ、歌の一節ごとに順々に指を突っ込んで、当たった者が鬼か、あるいは当たった者を次々除き、最後に残った者が鬼になり、隠れんぼは始められるのである。