昭和55年(1980)8月25日、岩美町浦富で採集
歌詞
子ども衆 子ども衆 花折りに行かしゃんか
何花折りに 地蔵の前の桜花折りに
一枝折りや パッと散る 二枝折りや パッと散る 三枝目にゃ 日が暮れて
新し小屋に泊まろうか 古い小屋に泊まろうか
新し小屋に灯が見えて 新し小屋に泊まって
むしろははしかし(*1) 夜は長し
朝とう(*2) 起きて空見れば 黄金の盃手にすえて
一杯飲みゃ 嬢御の 二杯飲みゃ 嬢御の 三杯目にゃ 肴がのうて参れんか
おれらの方の肴は うぐい三つ あい(*3)三つ
ショボショボ川の ふな三つ ふな三つ
〔注〕
- 「むずがゆい」意の方言。
- 朝早く。
- 鮎のなまり。
解説
岩美郡岩美町浦富に住んでいた女性(明治39年生まれ)からうかがった子守歌。この方は鳥取市福部町湯山出身だった。
江戸時代、元禄文化華やかなりしころ、鳥取藩士の野間義学(1692~1732)が、現在の鳥取市内の子どもたちから集めた歌の本『古今童謡』に出ている次のものがそっくりであり、伝承の長さを覚える貴重な歌だと言える。江戸時代の子どもたちも、このようなメロデイでうたっていたと想像できるのである。
おじやれ子ともたち 花折りにまいろ
花はどこ花、地蔵のまえの桜花 桜花
一枝折はパッとちる 二枝折れはパッと散る 三枝の坂から日か暮れて
あんなの紺屋に宿かろか こんなの紺屋に宿かろか
むしろははしかし 夜はながし
暁起て空見れば ちんごのやうな傾城が、黄金の盃手にすえて
黄金の木履を履きつめて、黄金のぼくとうつきつめて
一杯まいれ上ごどの、二杯まいれ上戸殿、三杯目の肴には
肴がのうてまいらぬか(おれらか町の肴には さるを焼いてしぼつて、とも)
われらがちょうの肴には 姫瓜 小瓜 あこだ瓜 あこだにまいた香の物
なお、隣の島根県浜田市三隅町古市場でも、少し似た次の子守り歌があった。
子ども衆 子ども衆 花を摘みに行きゃらんか
花はどこ花 地蔵が峠のさくら花
一枝摘んでもパッと散る 二枝摘んでもパッと散る 三枝目に日が暮れて
上の小松い火をつけて 下の小松い火をつけて 中の小松い火をつけて
なんばつけても 明からんぞ