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昭和57年(1982)1月7日、伯耆町溝口で採集

語り

 ある佐治谷に人のいい男の若いもんが一人おりましただって。
 そいから、こっちの家におじいさんやおばあさんのところに娘が一人おって、そいでその人のいい正直もんみたいなけん、それをまあ聟さんにもらわいいって、聟にそれが行きましたそうです。
 そげしたら、人間のいいようなもんだけん、そいでけえ、言われた通りに何もする。それでご飯食べたときに、お茶飲みかけたら、お茶がえらい熱いで、そのおばあさんが「お茶の熱いときは漬けもんを一切れ入れて、箸でもって混ぜたらお茶が冷めぇけん、そげして飲め。」って言われたら、そげして、そうしたら漬けもん入れて混ぜぇとお茶がぬるうなって、そうで飲んで喜んでおりましたところが、ある日「風呂に真っ先に入れ。」って言われて、風呂に入ろうとしたら、風呂がちと熱かったそうで、何だかお宮だか何とかいうような名だったそうですが、その嫁さんの名を言って「漬けもん持ってきてごせ。」言って大きな声がする。
 そうで「漬けもん何にする。」「いや、漬けもん、はやはや持ってきてごせ。」
 そうで漬けもんを持ってきたら、その漬けもんで風呂を混ぜて風呂に入る。
「こらまあ、なんぼ混ぜてもあかの、冷めんけんしかたがない。まあ縁でなとほんなら水汲んできて、ちいとわて埋めて入るけん。」ちいで、嫁さんが水汲んできて、そげして風呂に入ったそうなていうような馬鹿話でございますけどなあ。
(伝承者:明治32年生)

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解説

  語り手の方の話では、この話は文久3年(1863)生まれの父から聞かれたものとのことだった。ここからこのような話が、かなり昔から佐治谷話として語られていたことが分かる。関敬吾『日本昔話大成』で調べると、笑話の愚人譚の中の「愚か聟(息子)」に「沢庵風呂」として登録され、全国に類話のある話である


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