歌詞
向こう通るは 竹内つあんか
茶の羽織にビドロ(※1)の帯で
鉄砲いなって(※2) 脇差し差いて
向この小山に 堆子撃ち行きゃる
雉子はケンケン 山鳥ゃパタパタ(伝承者:明治40年生)
※(1)ビロードの転化か。(2)「荷なって」 の訛り
解説
手まり歌の中に登場するこの男性は、あるいはかつての娘たちのあこがれの姿を示しているのかもしれない。粋な伊達男と映る、鉄砲撃ちの若者を主人公とするこの類の歌を、筆者は島根ではかなり採集した。しかしどうしたわけか、本県ではここに掲げた歌しか見つけていない。
せっかくなので、島根県のものを2例挙げておく。まず浜田市三隅町室谷の歌。
向こう通るは 吉さんじゃないか
鉄砲かついで 小脇差しょさして
雉子のお山に 雉子撃ちに
維子はケンケン ホロロ(※1)うつ
ホロロうって 何にする
ホロロうって 蓑にする
蓑じゃあるまい 笠であろ
笠はどこ笠 越後笠
一合五勺に 売るよりも
置いて殿御さんに 着せなされ着せなされ
(※1)「ほろろ打つ」は維子の鳴くことを言う。
益田市美都町二川の歌。
向こう通るは猟師じゃないか
鉄砲かついで火縄を持ちて
向こうのお山へ雉子取り行くよ
雉子はケンケン 山どりゃホロロ
谷の鴬ホッケッキョ、ホッケッキョ