歌詞
お月さんなんば 十三九つ
そりゃまんだ若(わか)いぞ
若はござらぬ さっさとくぐりや
行きはよいよい もどりはこわいぞ(伝承者:明治34年生)
解説
「お月さんなんば」で始まるこの歌も、くぐり遊びに使われていることを知って筆者は驚いた。他の地方での「お月さんなんぼ」はあくまでも天体に輝くお月さんを愛でてうたわれているのであるが、ここでとりあげたのは、あくまでくぐり遊びの歌としてである。このようにして遊んでいるのは、しかし、東伯郡に限られている模様で、他ではいまのところ採集例はない。ここで東伯郡での類歌を紹介しておくが、いずれも「くぐり遊び」が伴っていることを述べておく。
初めに北栄町島の事例。
お月さんなんば、十三九つ、そりゃまんだ
若い、若はござらぬ、去(い)にとうござる
行きはよいよい、もどりはこわい(伝承者:昭和6年生まれ)
次に湯梨浜町宇野の事例。
お月さんなんば、十三九つ、それはまんだ若いぞ
若はござらん、どんどとくぐれ(伝承者:明治35年生まれ)
どうして東伯郡内の「お月さんなんぼ」に限って、他地方のようにお月さんの愛でるのではなく、くぐり遊びの歌になっているのか。その理由は分からないのである。