昭和56年(1981)5月31日、鳥取市河原町河原で採集
歌詞
正月さんどこから トンド山のすそを
裏白を蓑にして ゆずり葉を笠にして
白箸ゅ杖にして 餅ゅ食い切り食い切りござった
(伝承者:大正7年生)
解説
正月が近づくとこの歌をうたって、子どもたちは正月を歓迎した。つまり、正月の神を擬人化しているのである。各地の事例を挙げておく。
鳥取市赤子田では、
正月の神さんは、どこからござる トンド山のすそから
裏白の蓑着て ゆずり葉の笠かぶって 白箸の杖をついて
餅を食い切り食い切り、ござった。
西伯郡南部町絹屋では、
正月つあん 正月つあん どこまでおいでた 畑田のかどまで
削り筈に団子さいて かじりかじり おいでた
鳥取市用瀬町宮原では、
正月さんは どーこどこ 万燈山のすその方 白い箸にバボをさいて
食い切り食い切り、今日ござる
境港市外江町芝町では、
正月つあん 正月つあん どこまでござった
ちいしの箸に団子をさいて かぶりかぶりござった
西伯郡日吉津村富吉では、
正月つあん 正月つあん どこまでござった 神田までござった
破魔弓杖について 羽子板腰にさいて 削り箸に団子さいて
かぶりかぶりござった
西伯郡大山町国信では、
正月つあんがござった どこまでござった うしろのドンドまでござった
羽子板腰にさいて 破魔弓杖についてござった
正月の神を歓迎し、この年の豊作を願う農民の願いが溢れているこの種の歌は、各地に存在しているのである。