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昭和61年(1986)8月3日、大山町羽田井で採集

語り

 昔あるところに吉次という商人がおりまして、鯖をはじめ、いろいろな品物を仕入れて帰りかけていましたが、あたりはいつの間にか暗くなってしまいました。そこへ山姥が出て来て「吉次待て待て、鯖一つごせ。」って言いました。吉次はしかたなく、その鯖を一つぽいーと投げておいて、山姥が鯖を食べている間に、自分が捕まらないようにと思って駆けって行きましたら、いいあんばいに小屋がありましたので、その小屋に駆け込みました。
 吉次は何も知らずに飛び込んだのですが、実はそこは山姥の家でした。そしてすぐに山姥が帰って来まして「ああ、今日はまんが悪かった。たった鯖が一つしか食えなかった。鯖売りを捕って食べようと思っちょったに、逃げられてしまった。しかたがない。腹が減ったけん、餅なと焼いて食べよう。」と言いいながら、餅を持ってきてそれを焼いて「餅が焼けたけえ、今度は醤油なとつけて食べよう。」と山姥は醤油を取りに行きました。その間に、吉次は隠れていた二階から、餅をみんな引きずり上げて食べてしまいました。
 山姥が醤油を持って帰ってみたら餅がみんななくなっていたので、それで今度は「餅がなんなったけん、また、持ってきて焼いて食べよう。」と言っているうちに今度は醤油をこぼしました。そこで山姥は「ああ、これじゃあいけん、食べることはやめにして寝ることにしよう。どこに寝ようか。二階に寝ようか、お釜に寝ようか、どっちに寝ようかなあ。」と言いました。そうして「いっさ、二階に寝ることにしよう。」と言って、二階にコトンコトン上がりかけてましたら、それを聞いた吉次は、びっくりしたものの、考えて梯子段の上から懸命に虫の糞みたいなのをコロコローッと落としかけました。山姥は「ああ、これ、梯子が折れえかしらんなあ。」と言って「いっさ、お釜に寝よう。」とお釜に入って蓋をして寝ました。
 吉次はとても喜んで、そこに行きて、釜の下に火をコチコチと焚きかけました。そうしたら、山姥は「ああ、もう何時かなあ、何とかカチカチ言わあ。」と独り言を言って釜に入りました。
 ところが、今度は火が燃えついてボーボーと音がしました。山姥は「ボーボー鳥がほえ出いたわ。もう夜が開けるわい。」と言って寝ていましたが、今度は熱くなってきましたので、それで「ああ、熱いわ、助けてくれ、助けてくれ。」と叫びました。しかし、吉次は「おまえは鯖を取ったぁ悪いことすうけん、焼き殺してしまう。」と火を焚き続けました。 それで山姥はとうとう焼き死んでしまったそうです。
 その昔こっぽり。
(伝承者:明治44年生)

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解説

   これは本格昔話に属する話で、広く知られている。ただ、多くの類話では商人が馬に荷を負わせて山道を歩いていると山姥に出会い、はじめに鯖を少しずつやり、急いで逃げるが、それらを平らげた山姥は馬の足を所望し、それを一本ずつやるが、やがて商人自身を狙われていると知って…と続く場合が普通である。


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