語り
なんとなんと昔。退休の寺に化物が出えて。
みいながように「何だらか。」「何だらか。」てって、夜うさになあと三人来て踊うだって、退休の寺で。
「生臭坊主を取って噛もう。」てって、一人は踊うし「トッテンコボシはうちんかや。」てって、一人は踊るし、そうかあ一人は「秋風吹けば、実はさんてんポロン。」て三人世話ぁやいて世話ぁやいて踊っちょいて。そうから、きゃあ、また、踊っちょいて、け、いのうだって。
そうから「何だらぁか。あげに、ま、ほんに毎夜さ毎夜さきて踊うだが。」てって、調べてみなはったとこうめが、
「生臭坊主を取って噛もう。」てえのは、鶏の古いのが化けて出る。
そうから、その、「トッテンコボシはうちんかや。」て言うのは、一つは椿の横槌が千年すれば化けえだてって。
そうから、一つは山芋のムカンゴが秋風、吹きゃあ落ちますけんなあ、そで「秋風吹けば、実はさんてんポロン。」て山芋の古いのと横槌の、け、古いのと、鶏の古いのと、け、三人、そげしちょつて毎夜さ化けちょって踊りょっただ。
そげして調べて見たらそげな正体だった。
その昔こんぽちゴンボの葉。(伝承者:明治30年生)
解説
この話は本格昔話の「化け物問答」の断片が伝説化したものだと思われるが、退休寺というのは、大山町退休寺にある曹洞宗の名刹である。本尊は聖観世音菩薩で14世紀に建てられているのである。