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昭和61年(1979)8月4日、大山町羽田井で採集

語り

  昔々、あるところに、ある長者の家に千畳からの田を一日に植えてしまわにゃいけんので、どうしても水が当たらんので、かしらにゃ行きてみましたら、大きな蛇が横たわっておりまして、水が当たらんで、それから、その主人が 「頼んけえ、ここの田を水当てさしぇてごしぇ。そうだなけらあにゃ、これから当てることは出来ん(うちの娘を一人おまえの嫁にやるから)。」てって言いましたら、そうしたら、どいてもらって千畳の田は出来ました。
 そうから、その旦那さんは帰って、朝間起きて寝ちょうなはあと、お嬢さんが三人ありました。最初のお嬢さんが「お父さん、起きてお茶まいれ。」てって行きなはったら、「お茶もこげなわけでほしくはないども、おまえがI(蛇の所へ嫁になって)行きてごいたら飲む。蛇がこげなことで頼んで、千畳の田を当てさせてもらったが、その水が当たらんので、おまえが(嫁に)行きてごしたら飲む」てって頼みなはったら「それ、お父さん、無理だわ。」てって逃げてしまいなはあ。
 今度、中のお嬢さんが来て「お父さん、お茶まいれ。」と言います。
「お茶もほしくはないどもな、こげなわけで、ま、ほんに。クチナワのとこへ(嫁に)行きてごしたらな、お茶は飲むども、そうだなきゃねば、お茶はほしくない。」それから、今度、三人目のお嬢さんが行きて「お父さん、お茶まいれ。」て。したら「こげなわけでなあ、蛇のところに行きてもらわにゃ、もう、仕方がないだわい。」てって、話しなはつたら、一番末のお嬢さんが「だったら、わしは行きますけえ、起きてお茶のみなはえ。」って、そげして今度は
「わしの願いもああで、聞いてごしなはい。」「何だか。何でもかなえてやあけえ、話いてみい。」「そうしたら、千本の針と千巻のオト帳を作ってごしなはれ。そえすりゃ行きますけえ。」てつて。
「それでは易いことだ。行きてごせ」てって、喜んだそうです。で、そいからそれを作って、駕篭に乗して、何て池でしたかなあ、そこの池のところに連ぇだって行きて、もうみんながように恐れて帰ってしまいますし、お嬢さんがこげしておおなはつたら、大きな蛇体ですわなあ、にょーいと顔出いて来ましてな、それでその千巻のオト帳、針千本、それを頭からかしげなはったら、今度はええ旦那さんになつて、もう角が折れて、「もうこげんなつた」てって。
 それと、今度円満に暮しなはったちゅう話こっぽりです。
(伝承者:明治44年生)

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解説
 この話は関敬吾『日本昔話大成』では、本格昔話の中の「婚姻・異類聟」の「蛇聟入・水乞型」に属している。ところで、わが国の異類婚姻はたいてい不幸な結末になるが、ここ徳永さんの話では、まったく珍しくハッピーエンドで終わっているのである。なお、ここでいう「お茶」というのは、徳永さんの話では朝ご飯のことだという。



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