語り
なんとなんと昔ああとこにじいさんとばばさんとござつて、じいさんは山に行かはる、ばばさんは川で洗濯しさりよったら,瓜が流れてきて「こらま、瓜が流れてきたわい。ほんに、ま、はや拾って、持っていんでじいさんにもたまっちょって(入れておいて)へんげんならん(あげねばならない)。」と思ってたまっちょったが、ようにあんまりうまい瓜で、け、また食い、また食いしょったらなんなってしまって、その瓜が。そうで、また川に出ちょって「もう一つ流れがすう、じいさんの口にちょっと入れ。」て行ったら、また、上から流れてきただって。今度はほんに食わんやに取っちょかんならんと思って斗ビツに入れてたまっちょったら、そうから、じいさんがもどらはったけん「はや、じいさん、今日は瓜がたまってああけん、食わはいよ。」て斗ビツ開けてみたら、何があぶりげな、かわいげなかわいげな女房の子が出てきただって。
「あら、こりゃまあ、瓜だったにこげなかわいげな女房の子が出てきた。これ、まあ、うちの子にせんならん。瓜から生まれただけん瓜姫てえ名につけんならん。」そうから、かわいがって、じいさんとばあさんとして、「瓜姫や、瓜姫や」てってかわいがっておった。
まあ、大きんなって、15、16になって機織おやになって、そうから「おらんだあは畑に行きてくうけん、わら、この機織れよう。」そこにアマンジャクがおって、け、どげだり悪ことしてこたえんだって。
そで「アマンジャクが来てもなあ、戸を開けえだにゃけんなあ。戸を開けんなや、ちょっこうだり開けんなや。」てって、ようにように言っちょいて出っさったただって。
そげすうと瓜姫さんが戸をたっちょって、機織らはあに来て「瓜姫さん、ちょっこり開けてごしなはい。ちょっこり開けてごしなはい。」てって言いだども「じいさんやばばさんが開けんな、て言わはつたけん開けられん。」て言ったってけ、聞かんだけん、け「手の入あほど開けてごしなはい。」てって言いだ。
そか「手の入あほど…なら、そうほどよか開けんど。」てって手の入あほど開けっさったら、なあに手の入るほど開けたら、け、ダーッと入って、そげして瓜姫さんを裸にして、瓜姫さんの着物をわが着て、そげして瓜姫さんは柿の木のテンパ(てっぺん)につり上げて、そげしちょったら、じいさんやばばさんがもどってきて「瓜姫がおらん。」なんてことで。
たら、アマンジャクが「瓜姫さんは木のテンパ。アマンジャクはここにおる。」てって、瓜姫さんの着物着ちょっただって。
そうから、がいに怒ってじいさんがアマンジャク、三つに切って、ソバとカヤとキビの根に埋めっさっただって。そで、根の方がそのアマンジャクの血で赤いだって。
そげな昔、聞いちょうますわ。その昔こっぽしゴンボの葉。(伝承者:明治30年生)
解説