昭和56年(1981)5月31日、八頭町日下で採集
歌詞
向こうばあさん縁から見れば 菊や牡丹や手まるの花や
手まるよう来た あがれとおしゃれ
あがれ茶茶飲め おすべり煙草 煙草吸うまにおままが煮える
これのお菊はなしてまま食わぬ 腹が痛いか 夏がめしゃるか
腹も痛ない 夏がみゃせねど 腹に八月の子がござる 子がござる
スットコトンよ また百ついた(伝承者:明治37年生)
解説
この歌は全国的な分布を持っている。県内でもよく聞かれる歌である。前半では手まりを擬人化して、やって来た手まりを歓迎しているが、それもそのはずで、現在のゴムまりとは違い、手まりは祖母や母が女の子のために夜なべ仕事などで、けんめいに作ったものであった。
岩美郡岩美町田後の女性(明治35年生)は、祖母が綿を丸めてその上を糸で美しくかがって作ってくれたものだ、と往時を懐しんでおられた。
そのようにして作られた手まりだっただけに、たいせつにしていた気持ちが、このような形の歌になったものと思われる。
鳥取市気高町酒津の歌。
向こうばばさん 縁から見れば 菊や牡丹や 手まりの花や
手まりよう来た あがれとおおしゃれ
あがることばはかたじけないが うちの嫁御はなぜまま食わぬ
腹が痛いか 夏やせしたか いつも夏やせしたこたあないに
腹に八月のややがおる ややがおる (大正元年生)
それにしても内容のませているのには、改めて驚かされる。
同市青谷町楠根の例。
向こうあばさん(おばさん)縁から見れば
菊や牡丹や 手まりの花や 手まりよう来た あがれとおっしゃれ
あがれことばはかたじけないが うちの姉さんなんでまま食わぬ
腹がにがるか 病気がさすか 腹もにがらぬ 病気もささぬ。
腹に三月のややがおる
あのスットントン このスットントン(明治40年生)
一昔前の古老から、よく聞かされた歌である。