●山本教育長
お手元に資料をお配りしておりますので、それを中心にご説明させていただきたいと思いますが、補正予算で2件、この度は提案をさせていただいております。1件は、高校の魅力化に伴いまして、県外募集というものを平成28年度の入学生から取り入れて取組を行ってきておりますが、一方では県外から募集するにあたって、県外からくる生徒の住まいの関係をどうしていくのかという隘路もかかえながら、その中で今年度は14人という県外の生徒がきており、住まいを確保するというのが各学校での課題となっています。
それに対して考えてみたいというご意向のある岩美町と連携するかたちで、町のほうで登録制度をつくり、ふだんの相談に応じていったり、あるいは初期の経費について助成をするといったこと、そしてまた下宿代を若干安くする部分については町のほうでご負担を願うといったことで住環境を整備することに新たに踏み出そうとしております。岩美高等学校下宿先ふるさとファミリー制度で、県外からの募集というのは、実は県立学校の魅力化に取組む中でどんどん減っていく生徒減への対応の一つでもあるわけですが、ただそれだけではなく、県外からの生徒などを見ますと、鳥取県の子どもたちがふだん持っていないような考え方でありますとか、行動力でありますとか、そうしたことで学校の中に、新たに活力が生まれているといった面での良さも学校の現場からも聞いておりますので、これはもっともっと積極的に進めていきたいという、そういう思いの中で、この事業を起こしたところでございます。
併せまして、これまで高校の魅力化と言いますと、どちらかというと県内の中学生や保護者に対して、県内の高校が取り組んでいる魅力化を地域にアピールしてきたわけですが、今後はその魅力をもっともっと県外に発信したり、あるいは県外の中学生に鳥取県の良さが伝わっていくような、そんな部分をブラッシュアップしていって、魅力化を図っていく。たとえば先般、青谷高校でサーフィンの授業を取り入れるということが民放で取り上げていただきましたが、鳥取県人からすると綺麗な海があるのが当たり前ということなんですけども、都会の中学生などから見ると、我々がすごくそこに魅力として受けとめていない部分も、魅力として受けとめていただいているようなことが、たくさんあるんじゃないかなと、そうした自然環境であるとか、そういうものを生かした学びというものを鳥取県で生み出して、それを県外に対して発信することを進めていきたいと思っております。
そんなことも含めてこの高校魅力化フォーラムなども合わせていって、県外からの募集についても進めていきたいと考えておるところでございます。ある意味、生徒減のことを言えば、中山間地で大幅に余裕がある学校については、どんどん県外からも来ていただくことで、学校の活力向上も図れるというふうに考えております。それだけではなくて、今移住もどんどん進めて、知事部局のほうでも進めておられますから、そうしたところともタイアップして合わせて考えていければ、鳥取県全体としての取組の方向性にも沿ったものであると考えて予算を提案させていただくことにしております。
もう一点は、今国の研究機関等がタッグを組んで、青谷上寺地遺跡で発掘された人骨を用いてDNAの分析が行われているということでございます。DNAの分析技術というのが以前に比べるとずいぶん進んで来ているということで、この分析がうまくいけば、青谷で発掘された人骨から出てきたDNAによって、青谷人ともいうべき弥生人の姿が復元できるということで、私どもも大変期待をしているところでございますし、そうした研究についても、折々情報をいただけるというお話も伺っています。そうしたことを県民の皆さんに発信しながら、青谷上寺地遺跡というものを大いに活用しようと思っていますし、また、研究の成果を史跡公園として整備を進めておりますが、そうした中で展示だとかいうことにもつなげていきたいというふうに思っております。
詳細な研究成果については、3月2日に、とりぎん文化会館で行われるシンポジウムで広く情報発信する予定ですが、これに先立ち、10月の19日から21日に開催の日本人類学会において、国立科学博物館が分析の中間成果を報告することになっています。つきましてはその共同研究の中間成果を日本人類学会の報告に基き、報告会をこの11月に鳥取でも開催させていただこうというふうに思っております。できるだけ現地に近いほうがいいのではないかということで、いま選定をしているところでございますが、併せて人骨の特別展などの開催も行いたいと思いますし、当初予算で既に弥生の王国に関する経費を計上しておりますので、そうしたものを活用して、その研究成果を発表していただくようなそんな機会を持つことにしております。そうしたことを含めまして、県教育委員会で所管しております社会教育施設について、指定管理者を指定する事案について、今回提案させていただこうと考えておるところでございます。
●山本教育長
・鳥取県学力向上推進プロジェクトチームの設置について
資料2で示しておりますが、先般、全国学力学習状況調査の結果が国のほうから発表されたところでございます。受験する子どもたちも当然年々代わっていくことでございますので、その年によって若干ばらつきのおそれもありますので、その年だけで一喜一憂するということは避けたいとは思いますが、この調査は平成19年度から毎年行われておりまして、当時は抽出調査というかたちで行われておりました。今はすべての学校で行われております。かつては、全国平均と比べますと、鳥取県はかなり上位にあったものが、最近低下傾向にあるということが、旧年度から続けて見ているとそういう状況なので、その状況を分析しながら必要な対策、たとえば算数・数学の計算問題が苦手だな、こういう問題が苦手だなというところでは、そういうドリルを作ったりして、それをやってもらうというようなことで、手は打ってきているんですけども、傾向として、やはり相対的に下がっており、今回は下回るものになったところを見ると、もう一度きちっと分析をし直して、手を打っていく、そういったことが必要な部分もあるんじゃないかというふうに思っているところでございます。
もちろん相対的なものですから、これまでの状況を各県も分析して、いろいろ工夫をこらしてやってきておりますので、全体の傾向を見ると、従来下位におられた県がずいぶん力を入れておられて、上がってきているところで、全体に平均が上がってきているので、必ずしも鳥取県の子どもたちの学力が低下をしたわけではないと思っていますけれど、そうしたことを改めて分析をし直して、対応して検討して、それを実施していくことが必要なのではないかなと考えておりまして、この度学力向上推進プロジェクトチームというものをつくって、これは外部からのアドバイスも入れながら取組を進めたいというふうに思っておるところでございます。外部アドバイザーとして兵庫教育大学大学院教授の浅野良一先生をお願いしておりますが、その先生はかつて鳥取県の教育審議会の委員をお務めいただき、今も様々な研修や現場に入ってアドバイスをしていただいたりということで、県内の学校現場の様子をよくご存じのことでございます。学力向上に向けて様々ないろんなノウハウを持っておられる先生でございますので、またご協力いただきたいということでお願いしたところでございます。
また、国立教育政策研究所の千々布総括研究官におかれましては、いろんな県の学力向上対策に関わってきておられまして、どういう県の取組のどういう部分が他の県に比べて学力向上に効果を発揮しているのか、そうしたことについても非常に見識がおありでございます。また、他の県でも学力向上に向けてのアドバイスをこの先生から受けながらやっておられるところもある中で、本県もぜひ学力向上に向けて様々な有益なご提言をいただければということでお願いをいたしたところ、非常にご多忙な方でいらっしゃるんですが、心よくお受けをいただいたというふうなことでございます。そうした中で、いろんな取組を鳥取県はやってきているということなどを説明してきましたが、その取組の方向については間違っていないだろうということはいただいておりますが、そうした取組が学校現場隅々まで行き渡っているかどうかというところが本県の課題なのではないでしょうかという指摘も既にいただいておりまして、一人一人の職員の方々の思いと一つにまとまっていくような取組も、その会議の中で議論できればと思っております。
また点取りだけではない、いろんな質問紙の調査を見てみますと、鳥取県の子どもたちは夢や目標があるかという問に対して、非常に低い回答率であったり、また地域の行事に参加しているかという問に対しては、非常に全国的にもトップクラスの参加率なんですけども、地域の問題などに関心があるかという問になると、途端に全国平均よりも下回り、またそれをなんとか変えていこうかと思うかということになると、また更にそれが低くなるということでございます。そうした意欲といいますか、そうした面でありますとか、あるいは家庭学習の時間などでも、課題があるというようなことも含めて、そうした辺りをどうしていくのか、もう一つの論点になろうかというふうに思います。
また、福井の話などを聞きますと、自然に先生方が相談したり、助け合うという姿が非常に多く見られるということで、アドバイスをしたりというようなこと、あるいは中学校と掛け持ち制度というか、仕組みが当たり前になっているようですが、鳥取県では横向きというか、たとえばある中学校の国語を捉えてみるときに、一人の先生が1年の1・2・3組を持つことが多いようですけども、福井は1年の1組、2年の1組、3年の1組を一人の先生が持つという縦の学年を持っている。そうすると福井では1年の国語を教える先生が3人いるので、その3人が1年の国語について常に話し合ってできますが、鳥取は一人ですから自分の考えで同じ学年を同じように。その辺で普段から教員が話し合っているということが習慣的に行われるというところで、いろんな若手の教員が入ってこられても、ベテランがアドバイスをしたりとか普段から行われている。そうした中で今鳥取県でも、大量退職・大量採用の時代を迎えて若手がどんどん増えて、こうしたところをどうこれから乗り越えていくかということも一つの論点になろうかと思います。
最後4点目が先程申しましたが、こうした取組考え方なりが行き渡っているかどうかという辺りの県教委あるいは市町村教委の指導体制のところもつながっていくと思い、そうしたことについてすぐ取組むべきものと、少しじっくりと腰を据えて取組んでいこうというのと分けながら、議論を進めていきたいと思って、すぐ取り組むべきものについてすぐに対応していくということで、取組を進めていきたいというふうに思っております。
・ふるさと教育の充実について
先程一つの質問紙調査から出てきた課題として、多様な活動には参加する割合は高いんだけれども、意識の面で見て課題があるんではないかということが出てきております。そうしたことについて、このふるさと教育を進めていくことで、そうしたことにつなげていけないかと。そうした意欲でありますとか、社会に関わろうとする力を付けていくことができないだろうかというふうに考えているところでございます。
一つは、ふるさとの良さを知って、それでふるさとに誇りを持つということでありますとか、ふるさとで活躍している人と関わるということで、大学のときに県外に出ても帰ってくるといったようなことにもつながっていくのではないかなというふうに思っております。人工減少が課題の取り組みにつながることとして、いろんなところから今ふるさと教育を進めるべしというご意見をたまわっておりますので、そこについて考え方をまとめて全県を挙げて取組んでいくことにつなげていければと思います。
資料でたくさん後ろのほうに付けていただいていますが、実は各市町村でこのふるさと教育については副読本つくったり、様々な体験活動など取り組んでおられるところでございますので、後から後出しで「ふるさと教育はこうあるべし」というものをつくっていくというのは非常にある意味、市町村が進めておられることと違う部分もできたりするという懸念はあろうかと思いますが、それぞれの市町村で、それぞれの偉人とか、歴史とか、子どもたちに知っておいてもらいたいということはそこでやってもらえばいいことでありまして、県としては「これだけは知っておくべし」というような人だとか、歴史だとか、そうしたものを整理してそうしたものを使いながら、子どもたちが学んでいけるような副読本を県としても考えていければというのがありますし、それを使って教えていくというのも時間的なものも各学校では、その時間を確保することもなかなか難しい面があるのかもしれませんが、アウトプットのほうを検討して、ふるさとについてプレゼンテーションをするというようなコンテストでありますとか、そういうものを一方で設けながら、それをつくる一つの資料としてそれを活用してもらうといったような工夫をして、これからやっていくようにしたいと思います。
そういったことについて予算がかかるのであれば当初予算に向けてということになろうかと思いますが、そうしたふるさと教育に県としても力を向けて取り組んでいくということを一つ決めて、取り組んでいきたいと思っております。総合教育会議で、そういったことについて意見をお伺いしたところでございます。そうしたことについて今後進めていきたいと思っておるところでございます。
○記者A
岩美町の県外高校生の下宿登録制度のメリットについてお聞かせください。
●山本教育長
これまではどちらかというと、来たいという生徒がいて、実際にそれから下宿を探し始めるということなんですけども、うまく探せればいいんですけれども、これまでも下宿が見つからなくて、県内への進学を断念したという例もあります。そうした意味から予め「来てもいいよ」という方々を登録しておいて、そこが何軒かあれば、その人数分は来ていただけますので、予め登録することでのメリットがあると思います。そこに県とか地元の自治体も関わるということになりますと、来る生徒も安心感があり、単に個人と個人の契約より、預かる方々にも安心な部分をつくっていける制度になると思います。
○記者A
今回の岩美町の補正予算で、具体的には何人ぐらいの生徒が受け入れ可能なんですか。
●山本教育長
それは予算的には5人で、1人について18万円で5人分です。
○記者A
これはなにか実績に基いてはじき出した金額ですか。
●山本教育長
いろんなエアコンだとかの設備を積み上げてというよりは、どちらかというと敷金、礼金に当たる金額を想定して、そこの部分相当ということではじき出していますが、人数は、今県外から岩美高校に行っている生徒もあるんですけども、岩美高校の県外募集の枠が今5人です。
○記者A
まだ募集は開始していないんですか。
●山本教育長
予算が通らないと、正式には動けないんですけども、下話等々含めて、今こういう提案をしているかたちでの話はできるかなあというふうに思っております。
○記者B
これをモデル的にして全県に広げていかれるんでしょうか。
●山本教育長
地元で了解が得られれば、全県的にということです。