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昭和58年(1983)10月9日、大山町国信で採集

歌詞

向こうの山から猿が三匹とんで来て
大きな猿ももの知らず
中の猿ももの知らず
小さな子猿がもの知って
ござれ友だち花折りまいろ
花はどこ花 地蔵の前の桜花
一枝折ればパッと散る
二枝折ればパッと散る
三枝の先で日が暮れて
丹後の紺屋に宿借りて
あかつき起きて空見れば
船どもそろえて帆をかけて
帆かけ船はなんじゃいな
ええこのばんこのけいせんご
(伝承者:大正2年生)
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解説

 鳥取なかなか愉快なストーリーである。3匹の猿の中で子猿がもの知りなので、その猿の指示で花折りに出かけるという物語になっている。同類の歌は中部地区の東伯郡琴浦町八橋にも次のようにうたわれていた。

  向こうの山に猿が三匹とまって
  後の子猿ももの知らず
  先の子猿ももの知らず
  真ん中の子猿がもの知り猿で
  わっち子どもらち花折りまいろ
  花はどこ花 地蔵の前の桜花
  一枝折ってもパッと散る
  二枝折ってもパッと散る
  三枝の坂から日が暮れて
  兄の小屋に泊まろうか
  弟の小屋に泊まろうか
  兄の小屋もいやで候(そろ)
  弟の小屋もいやで候
  山伏小屋に駆け込んで
  あかつき起きて空見たら
  真っ赤な真っ赤なキイ船が
  船口そろえて帆をかけて
  この船はどこ船 商船 川船 バンバ船
  バンバがじょういにさらされて
  髪は河原のほうき草
  草履は川のドン亀 (伝承者・明治26年生)

  昭和56年10月12日にうかがった歌である。このときいくつもの歌や昔話も教えてくださった。稲刈りの忙しい中で、快く対応して頂いた思い出は懐かしい。
  ところで、3匹の猿の活躍する歌は好まれるようで、けっこう多くの地方で聞くことが出来る。しかし、花折りに行く歌はあまり聞かず、ほとんどの歌では猿ではなく人間の子どもが花折りに行く歌となっているのである。
 また3匹の猿が活躍する歌について、鳥取県では川へ飛びこんでナマズを捕ってくる話になっている場合がほとんどといってよいようで、ここに紹介した花折りに出かける話になっているのは少数派と言えるようである。


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