歌詞
中の中のコーバツ子
わりゃなして
背が低いだ
ゼンマイ梶原(かじわら)
いささですぼんだ(伝承者:大正2年生)
解説
鬼になった子どもが一人、しゃがんで目隠しをする。そのまわりを他の子どもたちが輪になって手をつなぎ、この歌をうたいながら回るのである。歌の終わったところで、鬼は目隠しをしたまま、自分の後ろの子どもを手でさぐってその名前を言い当てる。うまく当たれば鬼はその子と交代、当たらなければ再び遊びを繰り返すのである。この遊びの歌はいくつかの種類がある。「中の中の小坊さん…」や「かごめかごめ籠の中の鳥は…」など、どなたもご承知のことと思う。
さて、今回のものであるが、少し長めの歌が東部地区で見つかった。岩美郡岩美町蒲生の歌である。
中の中の小坊さんは
なんで背が低い
天(てん)満(ま)梶原の
ボシャサンにかがんで
それで背が低い
もひとつ回りましょう
もひとつ回って
お札参りに
まいりましょう
三度目がじょうずめ
もひとつ回って
じょうずめ
(女性・明治35年生)
昭和55年8月25日にうかがったが、オーソドックスな歌は、鳥取市美和町にあった。
中の中の小坊さんは
なんで背が低いやら
エンマ梶原
イシャシャにこごんで
後ろの正面だぁれ
(女性・大正4年生)
さて、鳥取藩の元禄生まれの野間義学が集めた当時のわらべ歌集『古今童謡』には、このころの同類が次のように紹介されていた。仮名づかいを現在に直して示しておこう。
中の中の子仏は
なぜに背が低いぞ
エンマの梶原で
いそいそとかがんだ
かがんだ
さらにもうひとつの歌が次のようにも出ていた。
はたのはたの子仏は
なぜに背が低いぞ
エンマの梶原で
いそいそとかがんだ
かがんだ
鳥取城下で50曲を集めたわらべ歌集『古今童謡』については、これまでにも再三触れておいたが、わらべ歌を扱った本としては、これまで世界で一番古いと言われていた、イギリスの大英博物館に所蔵される39曲を集めた『親指トムの唄』より10年余りも前のものなので、鳥取県民としては大いに誇ってもよいものであろう。