語り
昔あるところになあ、おじいさんとおばあさんと貧しゅう暮らしとったところがなあ、そいたら、竹の鉢い編んで、そしておじいさんが売りに出て、そして、「あれこれ買うてくるじゃ。」言うて出よられたところが、道ばたになあ、六体地蔵さんがおられて、それが、もうずっと雪が降って、雪がいっぱいこと頭にあるもんじゃけえ「こりゃあ気の毒な、ほんに気の毒なけえ、こりゃあ地蔵さんにまあ、笠かぶしてあげにゃあ。」言うて。それから頭へきれいに雪い取って、それから竹の鉢の笠ぁ、これかぶし、これかぶし、まあ、六体地蔵さんにみなかぶして、そうして「おばあ、もどった。」「何ぞかんぞ買うてこられたかい。」言うて「ふーん、何にも買わなんだけどなあ、お地蔵さんが頭の上に雪がいっぱいこと降っとって、どうでも気の毒でこたえんもんだけえ、お地蔵さんになあ、笠かぶしといてもどった。」「ふん、そうか、そうか、そりゃあよかったなあ。何にものうてもおじいさんいいが。何じゃ笠かぶしてあげたらお地蔵さんが喜ばれるわ。」言うて、夜、寝とったげな。
そうしたら、もう夜中になあ、
ああ、えっさらえっさらえっさらえっさら
いう音が聞こえる。「何じゃろうなあ、おじいさん、あの音は。」「さーあ、何じゃろうなあ、だれが来たじゃろうなあ。」言うて聞いていたところが、また、
えっさらえっさらえっさらえっさら
いうて、また、来られる。「まーあ、次ぃ次ぃ、えっさらえっさら。」言うて。
そうして見りゃあ、六人のお地蔵さんが、みんなで米を運んで来られる。
ずっといっぱいこと米を運んで、玄関に置いてごしとられて、そいから起きて見りゃあ「まーあ、おじいさん、たいしたことじゃ。こりゃーあ、ほんにお米をまあー、お地蔵さんがお米をいっぱいこと持ってきてごされた。こりゃーあ、たいしたことじゃ。」言うてなあ、喜んで、喜んで。
おじいさんとおばあさんとは、ちょっとの間に大きな長者になってなあ、米がたくさん出来て、ええ年を取ったとや。そればっちり。(語り部:明治40年生まれ)
解説
笠地蔵の話はよく知られているので、どなたも一度はお聞きになったことがあると思われる。鳥取県東部の山村にもこうして静かに息づいていたのである。