国の財政状況は、令和元年度末の債務残高が対GDP比237%と、主要先進国中最悪の水準が続く中で、景気の悪化に伴う税収減と新型コロナウイルス対策に係る巨額の支出による財政赤字の拡大により、令和7(2025)年度までに国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化という目標の達成が大変厳しい状況となっており、今後、この危機的状況からの脱却に向けて、経済再生と財政健全化に向けた取組の一層の強化が行われるものと想定される。
本県においても、依然として高い水準にある公債費や高齢化による社会保障関係費の増加など様々な財政圧迫要因を抱えている中で、新型コロナウイルスの影響による大幅な県税収入の減が見込まれ、また、本県財政に大きな影響のある地方交付税についても、原資となる国税収入の減が見込まれるなど厳しい状況が想定される。
これらのことから、本県財政は今後も厳しい財政運営を強いられることを予想しなければならない状況であり、選択と集中をより一層進め、財政の健全化を推進する必要が高まっている。
新型コロナウイルスの感染拡大が未だ収束を見ない中、次なる感染の波への備えにも万全を期すため、生命と健康を守るための取組に最優先で取り組む必要がある。加えて、国は、「経済財政運営と改革の基本方針2020」において、新しい未来に向けて、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた経済・財政一体改革の推進や「ウィズコロナ」の経済戦略による経済活動の段階的な引上げ、さらには、デジタルトランスフォーメーションの推進や東京一極集中型から多核連携型の国づくりなどによる「新たな日常」の実現に向けた施策を推進することとしている。
本県においても、医療提供体制の更なる充実・強化や「新しい生活様式」による感染防止対策など、新型コロナウイルス対策に最優先で取り組むとともに、疲弊した地域経済の回復や、ポストコロナを見据えた地方への企業移転や新たな人の流れの創出、さらには、経済・教育分野におけるオンライン活用の充実・強化や、非対面型ビジネスモデルへの転換支援など、危機的状況をチャンスに変えるような視点や、ウィズコロナ、ポストコロナにも貢献できるような視点をもって事業を組み立てること。
なお、イベント等に係る事業の組立にあたっては、「3密(密閉、密集、密接)」を避けた会場設営や、新型コロナ対策安心登録システムの活用、オンラインでの実施など、感染防止対策を施すことを踏まえた内容で予算要求すること。
デジタル化やICT技術の進展により、全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、少子高齢化や地方の過疎化など地域の課題や困難を克服する、Society5.0社会の実現に向けて取り組んでいく必要がある。
こうした中、電子申請の更なる活用や業務のペーパーレス化、AIやRPAといったICT技術を活用することにより、一層の業務の効率化を行い、働き方改革や県民サービスの向上に資する取組について積極的に検討するとともに、県内産業における先端技術の活用や行政手続きのデジタル化など、Society5.0社会の実現に向けて取り組む。あわせて、各事業の予算要求に当たっては、関係する事業者など、県民の働き方改革の観点からも事務負担軽減等の検討を行うこと。
その際、デジタル時代や新しい生活様式に移行するための行政手続きの見直しについて検討する「新たな行政様式確立プロジェクト」を、令和3年度当初予算編成作業に連動させることにより、デジタル化の推進を予算を絡めた実効性の高い施策に練り上げること。
少子高齢化時代において、地域が急速な人口減少や地域経済の縮小を克服し、将来にわたって成長力を確保するには、人々が安心して暮らせるような、持続可能なまちづくりと地域活性化が重要となってくる。
本県においても、本年4月に「とっとりSDGs宣言」を行ったところであり、循環型社会の推進などの環境施策や、健康づくり、地域コミュニティ活性化による持続可能な地域づくりなど、地域課題の解決の促進に向けて、全ての分野において、積極的にSDGsのゴールを意識した事業の組立を行うこと。
県財政を取り巻く状況が極めて厳しくなると見込まれる中で、重点施策に県の資源(財源・人員)を傾注する必要があるため、県民の皆様からの意見等を踏まえ、機動的に、最小の経費で最大の成果を導く、効果的な事業の立案を行うととともに、事業のスクラップ・アンド・ビルドをこれまで以上に徹底すること。
その際、単に事業予算だけではなく、事業遂行する際のマンパワー等にも留意し、組織全体でのトータルコストの膨張は、厳に慎むこと。
なお、新型コロナウイルスの影響下において、会議や打ち合わせ等については、引き続き、出張の必要性を適切に判断し、ウェブ会議システム等を積極的に活用するなど、感染防止に努めるとともに、ポストコロナにおける会議や出張の在り方を定着させるよう取り組むこと。
したがって、予算要求にあたっては、意義や効果の薄れた事業の見直しや類似事業の統廃合を積極的に行うため、新規事業はもとより全ての事業について費用対効果、必要性・緊急性等を検証するとともに、公共関与のあり方、持続可能性、国や市町村との役割分担などの視点で、思い切った事業の取捨選択を行うこと。
また、一定規模以上の公共施設整備等の際には、「鳥取県PPP/PFI手法活用の優先的検討方針」に基づき、従来型手法(県の直営実施)に優先してPPP/PFI手法を検討すること。
以上のことから、特に継続事業に関して、事業目的の明確化及び、成果の説明(定量的評価又は定性的評価)が困難な事業については、廃止を検討すること。
県内産業の育成による県内経済の発展と県民の雇用の確保を目的に制定された「鳥取県産業振興条例」の趣旨を踏まえ、県産品・県産材のより一層の活用に努めるほか、県内在住・県出身の人材、県内事業者の活用を意識した事業の組み立てを検討すること。
障がい者就労施設等の受注の機会を確保するために制定された「障害者優先調達推進法」の趣旨を踏まえ、障がい者就労施設等から優先的に物品及び役務を調達するよう配慮することとし、予算積算時に障がい者就労施設等から見積書を徴取するなど、積極的かつ計画的な発注につながるよう努めること。また、「鳥取県手話言語条例」や「あいサポート条例」の趣旨を踏まえ、手話通訳者及び要約筆記者の配置に必要な経費を見積もるなど、ろう者が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう配慮するとともに、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の充実と情報アクセシビリティの保障に配慮すること。