令和5年度地方財政収支見通しでは、地方税等の回復を反映して、実質的な地方交付税は減少する仮試算となっており、税収基盤が脆弱な本県では、地方交付税を合わせた一般財源の動向は極めて不透明である。このため、依然として高い水準にある公債費や高齢化による社会保障関係費の増加など様々な財政圧迫要因を抱えている中で、今後も本県では厳しい財政運営を強いられることを予想しなければならない状況であり、選択と集中をより一層進め、財政の健全化を推進する必要性が高まっている。
国は、10月末までに物価高騰や賃上げへの取組、円安を生かした「稼ぐ力」の強化、「新しい資本主義」の加速、国民の安全・安心の確保を柱とする総合経済対策を策定する予定である。本県としても、関連する国の補正予算の情報収集を進めるとともに、この財源を活用して前倒しで計上すべき事業については、年度内の補正予算編成について機動的に対処していくこととする。
今後の新型コロナの感染状況や国の方針や予算動向等を注視しつつ、新たな感染拡大に備えた医療・検査体制の整備と感染防止対策の徹底に取り組むとともに、DXの加速、GXの推進、持続的な県内経済の構築に向けた賃金上昇と生産性向上への取組、地方への新たな人の流れの促進、インバウンドの再開を含む観光需要の本格回復を踏まえた対策、農林水産業、スポーツ・文化芸術の振興、子育て環境のさらなる改善、学力向上の推進など、現状の課題を解決するための取組だけではなく、危機的状況をチャンスに変えるような前向きな施策や未来への投資の視点をもって事業を組み立てること。
また、近年、激甚化、頻発化している自然災害に対応するため、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を踏まえ、国の有利な財源を活用しつつ、災害に強い地域づくりを推進すること。
さらに、喫緊の課題である公共施設等の老朽化対策については、公共施設等総合管理計画及び個別施設計画に基づき、財政負担の軽減化・平準化や公共施設等の最適な配置を実現するため、有利な財源を最大限活用して、長寿命化等に取り組むこと。
なお、急速かつ強制的に社会の非接触化が進んだことにより、対面を前提としない、場所にとらわれない、密を避けるなどの不可逆的な変化が起きていることを踏まえ、イベントの会場設営、出張の必要性等を含めた事業実施方法の検討を行うこと。
コロナ禍により遠隔・非接触などのデジタルツールが普及しているところであるが、デジタル化やICT技術の進展により、全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、少子高齢化や地方の過疎化など地域の課題や困難を克服する、Society5.0社会の実現に向けて取組を進める必要がある。
こうした中、電子申請の更なる活用や業務のペーパーレス化、AIやRPAといったICT技術を活用することにより、一層の業務の効率化を行い、働き方改革や県民サービスの向上に資する取組について積極的に検討するとともに、県内産業における先端技術の活用や行政手続きのデジタル化などに取り組むこと。
少子高齢化時代において、地域が急速な人口減少や地域経済の縮小を克服し、将来にわたって成長力を確保するには、人々が安心して暮らせるような、持続可能なまちづくりと地域活性化が重要となってくる。
本県においても、循環型社会の推進などの環境施策や、健康づくり、地域コミュニティ活性化による持続可能な地域づくりなど、地域課題の解決の促進に向けて、全ての分野において、積極的にSDGsのゴールを意識した事業の組立を行うこと。
県財政を取り巻く状況が極めて厳しくなると見込まれる中で、重点施策に県の資源(財源・人員)を傾注する必要があるため、予算要求にあたっては、機動的に、最小の経費で最大の成果を導く、効果的な事業の立案を行うこと。その際、単に事業予算だけではなく、事業遂行する際のマンパワー等にも留意し、組織全体でのトータルコストの膨張は、厳に慎むこと。
また、意義や効果の薄れた事業の見直しや類似事業の統廃合を積極的に行うため、新規事業はもとより全ての事業について、検証可能な成果指標を設定するとともに、費用対効果、必要性・緊急性等を考慮した上で、公共関与のあり方、持続可能性、国や市町村との役割分担などの視点で、思い切った事業の取捨選択をこれまで以上に徹底すること。
なお、事業目的の明確化及び成果の説明(定量的評価又は定性的評価)が困難な継続事業については、廃止を検討すること。
今後、複雑化・多様化する地域課題に対応していくため、行政機関だけではなく、それぞれが持っているネットワークの活用を含め、NPO、企業、大学などの多様な主体との協働・連携を進めること。
この観点を踏まえ、県民サービスの向上やコスト削減の観点から効果が期待できる場合は、アウトソーシングや民間活力の活用、公民連携による事業実施について検討するとともに、一定規模以上の公共施設整備等の際には、「鳥取県PPP/PFI手法活用の優先的検討方針」に基づき、従来型手法(県の直営実施)に優先してPPP/PFI手法を検討すること。
また、NPO等の民間事業者からの県と協働して行う地域活性化や県の課題解決につながる事業提案、相談等に対応するため、「民間提案事業サポートデスク」に寄せられた提案・相談に対する「鳥取県協働連携会議」での検証結果を可能な限り反映した要求を行うとともに、協働連携の具体的な手法の検討に当たっては、令和4年4月に策定された「鳥取県協働連携ガイドライン」を参考にすること。
なお、NPO等との協働・連携事業を立案する場合は、所要経費の積算において、実施する事業の内容に応じて人件費を的確に見込むこととするほか、事業実施に当たっての諸手続などで相手方に過度な負担を課すことのない仕組みを検討すること。
県内産業の育成による県内経済の発展と県民の雇用の確保を目的に制定された「鳥取県産業振興条例」の趣旨を踏まえ、県産品・県産材のより一層の活用に努めるほか、県内在住・県出身の人材、県内事業者の活用を意識した事業の組み立てを検討すること。
また、障がい者就労施設等の受注の機会を確保するために制定された「障害者優先調達推進法」の趣旨を踏まえ、障がい者就労施設等から優先的に物品及び役務を調達するよう配慮することとし、予算積算時に障がい者就労施設等から見積書を徴取するなど、積極的かつ計画的な発注につながるよう努めること。
さらに、「鳥取県手話言語条例」や「あいサポート条例」及び令和4年に制定された「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の趣旨を踏まえ、手話通訳者及び要約筆記者の配置や点字版及び録音版の広報物の作成など必要な経費を見積もるなど、障がい者が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の充実と情報アクセシビリティの保障に配慮すること。
加えて、令和3年に障害者差別解消法が改正され、障がいのある人から、社会的障壁を取り除くための配慮を求められた場合に、負担が重すぎない範囲で対応する、いわゆる合理的配慮が3年以内にすべての事業者に義務化されることとなったことから、県が事業者に委託して開催する研修やイベント等においても、今後合理的配慮が義務化されることを見越した取組が進められるよう、事業内容を検討すること。
なお、予算要求に当たっては、ジェンダー平等実現の視点をもって事業内容を検討すること。