特集/豊かな森をつくる ~県民の力で次代へ継承~

  鳥取県の面積の約7割を占める森は、防災や環境保全に重要な役割を担っています。さらなる森づくりの推進に向けて県は4月から、「豊かな森づくり協働税」を新設。森の若返りや県民参加による里山保全など、新たな取り組みで森の機能を守り育てます。
智頭町のスギ林の写真
智頭町のスギ林

多様な役割担う森林

  森林は▽水を蓄え洪水を防止する▽土砂災害を食い止める▽二酸化炭素を吸収して地球温暖化を防止する▽動植物の生息・生育の場▽人の心をリラックスさせる―など、多様な役割を担っています。これらの大切な機能を保全するために森林整備は大変重要ですが、林業の採算性の悪化や担い手不足で十分な森の手入れができていない現状がありました。
  このため、県では2005年度から、森林環境保全税を設けて間伐や森づくり活動などを支援してきました。昨年度末で同税の適用期間が終了したことから、同等の負担で「豊かな森づくり協働税」を創設し、より県民がかかわりながら森の保全と育成を進めることを目指します。
  新しい税の活用策として、収穫時期を迎えた人工林を伐採して森の若返りを図る皆伐再造林や、地域住民やNPOによる里山保全、子どもたちへの森林環境教育などがあります。今ある自然に触れ、その役割を理解することが、より豊かな地域づくりにつながっていきます。

皆伐再造林で若返りや花粉対策

  森林は林齢(森林の年齢)が若いほど二酸化炭素の吸収量が高く、16年から25年をピークに、徐々に下がっていきます。健全な森の機能を保つためには「()って、使って、植えて、育てる」というサイクルを守ることが大切です。
  県内では戦後大量に植林が行われ、その半分以上が50年以上経過して収穫可能な時期を迎えたことから、成長途中の木を間引き、残った木の成長を促す「間伐」を推進してきました。今後は間伐と並行し、伐採して新たな木を植えることで森を若返らせる「皆伐再造林」に取り組みます。
  同じ面積で比較すると、皆伐で生産できる木材は間伐の約5倍。県産材の安定供給につながり、県内の木材需要に占める県産材の割合を高めることが期待されています。
  新たに植林するのは、主にエリートツリーと呼ばれる成長が早いスギ、ヒノキやコウヨウザンなどの早生樹。最も過酷な作業である下草刈りの作業期間が短くて済みます。収穫期はこれまでより大幅に短縮されると見込まれ、木材としての性能も遜色ありません。
  また、エリートツリーの花粉量は一般的なスギ、ヒノキの半分以下。花粉は樹齢の高い木から多く飛散されるため、森の若返りを図ることが花粉対策にもつながります。
森のようちえん・風りんりんの子どもたちの写真
皆伐した後に苗木を植樹した森のようちえん・風りんりんの子どもたち。森を守る活動を通して、ふるさとを大切にする心が育まれる(鳥取市福部町)

豊かな森づくり協働税の概要

納税義務者
個人 1月1日現在に県内に住所・家屋などを有する者
※前年の所得が一定額以下のかた、生活保護を受給しているかたは課税されません。
法人 県内に事務所、事業所などを有する法人など

納める額
個人 年500円
※令和5年度から令和9年度まで適用されます。
法人 法人県民税均等割の5パーセント(年間の金額)
※令和5年4月1日から令和10年3月31日に開始する事業年度に適用されます。

豊かな森づくり協働税で取り組む事業

豊かな森と里山を次代へ継承

皆伐再造林、シカ対策の強化
皆伐再造林の推進、エリートツリー・早生樹の造林推進、シカ柵の管理・撤去の支援

松くい虫、ナラ枯れ対策
ナラ林の若返り支援、危険な枯れ木などの除去、松くい虫被害を受けた海岸松林への植栽

皆伐再造林を推進する基盤整備
皆伐に向けた健全な森づくり(間伐・作業道整備)の支援

集落周辺の災害防止につながる竹林対策
集落等周辺での竹林整備(適正管理)の支援、人工林への転換に向けた植樹などの支援

県民の参画と協働で森づくりを推進

協働による持続可能な里山保全
地域住民・NPO・森林組合などの林業事業体による里山再生の支援

森づくりへの県民参加の推進
NPOなどによる森林体験活動などの支援

幅広い世代への森を守り育てる機運づくり
若年層への森林環境教育(出前授業)の支援、森づくりの普及啓発

循環を大切に健全な森をつくる

鳥取県東部森林組合 代表理事組合長
嶋沢(しまざわ) 和幸(かずゆき)さん
嶋沢和幸さんの写真

  「皆伐には負のイメージがあるかもしれないが、皆伐再造林は森を守るために大切な取り組み。多くのかたに知ってもらいたい」と嶋沢さん。皆伐エリアは土砂流出の危険性が少なく比較的傾斜が緩やかで、林齢60年以上の人工林を選定。今年度は約50ヘクタールを皆伐再造林する計画です。
  成長の早い苗木の植栽が進めば、低コストで健全な森を保つことが可能になります。近年は若い林業従事者も増加しており、嶋沢さんは「伐って、使って、植えて、育てるという循環を大切にすることで、森林を次世代に引き継ぐことができる」と期待を寄せています。

県民参画で里山を保全

  里山(人里に近い山林)では、かつては薪を集めるため、住民による定期的な伐採が行われていました。しかし、1950年代以降は薪を燃料に使うこともなくなり、放置された状態が続いて荒廃が進んでいる里山が少なくありません。
  過疎・高齢化により里山の手入れが難しくなっている地域が多いことから、県では地域住民やNPO、林業事業体などが連携しながら計画づくりや整備を進める、持続可能な里山保全の支援を始めます。樹木の伐採や歩道の設置などの危険が伴う作業は専門技術を持った森林組合などが協力し、住民は自分たちでできることを担当。幼稚園や小学校の子どもたちが里山に入り、エリートツリーや早生樹、広葉樹の苗を植樹するなど、森林環境学習にも今後いっそう力を入れていきます。
  若い世代が森に親しむことが森づくりの第一歩。5月には鳥取県植樹祭も開催されます。森の魅力を見直し、自分に何ができるか考えてみることが、県民の大切な財産である森を守ることにつながります。

森林や木の大切さ伝える

木育サポート森のきこりん(琴浦町) 代表
木山(きやま) 美佐枝(みさえ)さん(右)

木育サポート森のきこりん(琴浦町) 副代表
森下(もりした) 義雄(よしお)さん
木山美佐枝さんと森下義雄さんの写真
  木育(もくいく)とは、「木とふれあい、木に学び、木と生きる」取り組みのこと。県民有志による「木育サポート 森のきこりん」は、乳幼児の木のおもちゃを使った遊びの推奨や学校などでの木育授業、絵本制作などを通して、木の魅力や森の大切さを伝えています。
  昨年10月には大山で植樹や森林教室を盛り込んだイベント「みんなと『ぐるぐる』つながっている森」を「大山ブナを育成する会」と協力して開催しました。小学生から大人まで約70人がブナの苗木30本を植樹。森林教室では、ブナ林を散策しながら森が果たしている役割について専門家の話に耳を傾けました。参加者からは「森を見る目が変わった」「木を守り育てることの大切さを感じた」などの感想が寄せられました。
  「子どもたちが山に植えた木に思いを寄せることが、ふるさとを思う気持ちにもつながってくる」と木山さん。森下さんは「豊かな自然があり生態系は循環している。環境のために何ができるか考え実行してほしい」と活動への思いを語りました。
森を散策する様子
専門家の解説を聞きながら森を散策する参加者(昨年10月、大山の健康の森)

第67回 鳥取県植樹祭

【日時】5月13日(土) 午前10時から午後2時
【場所】
岩美町大谷
● 式典・代表植樹会場(大谷海岸広場)
● 参加者植樹会場(蒲生川沿い斜面)
【内容】
●美しいもりづくり功労者の表彰
●植樹祭テーマ表彰
●森林・みどりへの想い発表
●参加者植樹
●地元特産品の販売
●自然体験イベント(木工など)
●海を育てる森づくり見学会
https://www.pref.tottori.lg.jp/289607.htm

〈先着250人〉苗木の無料配布(ヤマボウシ・コムラサキシキブなど)

森林の保全活用に関すること
【問い合わせ先】 県庁森林づくり推進課
電話 0857‐26‐7335 ファクシミリ 0857‐26‐8192
メールアドレス moridukuri@pref.tottori.lg.jp

豊かな森づくり協働税に関すること
【問い合わせ先】 県庁税務課
電話 0857‐26‐7053 ファクシミリ 0857‐26‐7087
メールアドレス zeimu@pref.tottori.lg.jp



 

 

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