~日系企業との取引に関心のあるタイ企業インタビュー~
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
近年タイでも高齢化が急速に進んでおり、2022年には総人口の14%が65歳以上と「高齢社会」に入ったと報じられました。2035年には高齢化率が21%を超える「超高齢社会」になることが予想されており、タイ政府も高齢者向けビジネスを奨励する各種施策を打ち出しています。日本と比べて社会保障が脆弱なタイでは、高齢社会に向けて不安の声も小さくはありませんが、それと同時に大きなビジネスチャンスと捉える声も上がっています。
今回は、日本製の高齢者向け商品の輸入販売を行っているタイ企業「VINN ヘルス 株式会社」副社長のウティパックディ・カヌンニットさんのインタビューをお届けします。
御社の歴史、事業内容について教えてください。
VINN HEALTH COMPANY LIMITED
VINN ヘルス 株式会社
VINN HEALTH COMPANY LIMITEDを立ち上げたきっかけは、日本とタイの高齢者の生活実態の違いに気づいたからです。タイと違って日本の高齢者は介護者に頼らず、自立して生活しています。高齢者や障害者のために利便性、安全性、美しいデザインを考慮して設計された歩行補助器具やイス付き杖といった、福祉器具を使用して生活しています。日本の高齢者の生活スタイルは、私にとって高齢者向け福祉用具に対する見方を変えるきっかけとなりました。また、美しさも求めたデザインは福祉用具のイメージを変え、利用者に「自分が要介護者だと見られるのでは」という不安を抱かせることなく、気軽に使うことができるように工夫されていることもとても感心しました。
高齢者向けの斬新な用具をみて、タイにそれらを輸入販売し、あらたな選択肢を提供することで高齢者の生活を支えることができればと考えるようになりました。その他、健康問題を抱えながら働く人向けの用具、事故防止のための用具、体を不調から守り慢性病を抱えるリスクを軽減する用具も取り揃えています。
Gen Grandの店内
自社の販売店「Gen Grand」では、日常品を選んで買うのと同じ雰囲気で高齢者向け福祉用具を購入いただけるために、店舗は明るくし、現在の高齢者のライフスタイルのイメージにあわせた内装にしています。この先、福祉補助用具への見方が変化し、タイの高齢者たちが自立して自由に生活しやすくなることを願っています。
タイのヘルスケア業界における課題とチャンスを教えてください。
タイの高齢者人口の増加に伴ってヘルスケアの市場規模は拡大し、ビジネスチャンスは飛躍的に広がっています。その多くは薬や医療器具の販売、老人ホーム設立といった分野に力を入れていますが、高齢者向け用具や家庭用健康器具の開発を行うところはまだ少数です。その一方で、補助用具の重要性や必要性が認知されていない、用具の使用により高齢者や病人だと思われるのは嫌だ、という価値観や、健康関連商品を継続的に購入してもらうのはまだ難しいといった、ターゲットである高齢者や働く世代の考え方や見方を変化させることが課題となっています。
御社の強みを教えてください。
店内の商品は、品質や安全性・利便性を重視し厳選されたものばかりを取り揃えています。日本人や日本の老人ホームで使用されている商品を選んでいて、各商品ごとに使いやすさ、デザインの美しさ、明るいカラーのものを中心に様々なスタイルやデザインの商品を取り揃えています。その他、用具の改良や設計も重視しています。お客様には用具の効果的な使用方法、手入れの仕方をアドバイスしています。
事業運営における社内の課題はありますか?
品質を重視しているので、日本から商品を仕入れています。しかし、輸入の制度が煩雑で融通がきかないため、遅延が発生したり、コストコントロールが大変です。色々なリスクを回避するため、事前に綿密な事業計画を作成することが必要です。また、タイの市場ではここ数年でオンラインショッピングが一般的になってきましたので、オンライン販売の対応をする必要がありました。しかし、引き続き店舗に足を運んでいただくことも重要だと考えています。各商品を実際に試して、品質を確かめ、使用方法や利便性を理解してもらうことはオンラインではできない、店舗販売ならではのメリットです。ターゲット層にリーチしやすいよう、病院やオフィスビルでのブース設置も戦略の一つとして検討しています。
日本とタイの高齢者の違いはどんな点がありますか。
日本とタイでは文化や価値観が異なります。日本の高齢者は自立している人が多いのに対し、タイの高齢者は子供や周囲からの支援に頼りがちです。また医療費や生活費といった高齢者への資金面の援助は、日本では厚生労働省による介護保険など様々な制度がありますが、タイではそのような公的な支援制度がないため、各個人が医療費などを工面する必要があります。タイの保健省でも高齢者用住宅の建設、医療や治療技術の向上、高齢者介護や高齢者向けアクティビティをつくるといった計画があるものの、あまり進んでおらず、高齢者が他の世代と交流する機会も創出できていません。
VINN HEALTH社のサービスについて教えてください。
弊社の直営店「Gen Grand」では、日常的に使うことができる買い物用の手押し車や折り畳み杖などの品揃えに力を入れています。健康に気をつけている人や働き世代でも使用できるサンダルやマットレス、カプセルケースといった商品もあります。前期高齢者には便座カバー、健康シューズ、椅子付き杖などが人気です。その他、働き世代からはジェル状クッションやデスクワーク症候群防止用グッズも人気です。
働き世代に人気の健康シューズ
商品と特徴について教えてください。
ほとんどの商品は日本から輸入しています。一部、台湾から仕入れているものもありますが、日本人によって品質が保証された商品です。日本からの輸入商品の特徴として、高品質、多機能、使用者の利便性を考えた設計、最新のデザインがあげられます。商品によっては高価格になりますが、それに見合った十分な付加価値があると思います。
ターゲットとする客層をおしえてください。
高齢者、両親の世話をする中年層、健康問題を抱える働く世代をターゲットとして、商品や日常用品を輸入販売しています。外国人の顧客はまだ少ないですが、商品の使用方法や機能について英語で店員が説明できるよう準備しています。
商品販売経路や販売後のアフターサービスについて教えてください。
「Gen Grand」で取り扱っている商品は、バンコク市内にあるショッピングセンターのK village Sukhumvit 26の店舗とウェブサイト(https://www.gengrand.com/)で販売しています。それに加えて、バンコク都内の病院やオフィスビルに商品PRのための特設ブースを設けたり、タイ全国への商品配送に対応しています。商品に問題が発生したり破損した場合は、お客様がすぐにスタッフに連絡できる体制を整えています。
今後のビジネス展望について教えてください。
外国企業とのビジネスの経験を積んでいきたいです。今は商品の品質が信頼できる日本企業とのビジネスが比較的多く、その他に台湾企業とも取引があります。今後は北欧のスゥエーデン、ノルウェーといった高齢者介護について技術やノウハウを蓄積している国とビジネスができればと考えています。
日本は高齢者のための様々な技術が豊富な国という定評があります。また日本人とタイ人の骨格構造は似通っているため、日本製の商品の方がタイ人にフィットしやすいという特徴があります。
将来的には、タイ国内で日本ブランドの高品質な高齢者向け福祉用具の市場を発展させ、日本のトレンドにあわせながら販売ラインを拡大したいと考えています。
日本人、日本企業へお伝えしたいことがありましたらお願いします。
タイでの高齢者向け用具の販売事業はさらなる拡大が見込めます。弊社はタイ高齢者の生活の質の向上と、高齢者が社会でこれまでと同じように安全な生活を送れるよう支援します。タイで高齢者向け商品の市場拡大は急速ではないものの、長期に渡って拡大が続くでしょう。恐れずに、ビジネスチャンスがまだまだ残されているタイの市場を我々と開拓してみてはいかがでしょうか。
【企業概要】
企業名:Vinn Health Ltd.
住所: 1055/676 State Tower Fl. 32 Khwaeng Silom, Khet Bang Rak, Bangkok 10500
Tel : (+66) 81-634-6464
Email : sj_vinnhealth@outlook.com
URL (タイ語) :https://www.gengrand.com
タイ王国の最新の現地情報については、以下にお問合せください。
鳥取県東南アジアビューローの運営法人(鳥取県が業務委託)
アジア・アライアンス・パートナー・ジャパン株式会社
タイを中心に、ベトナム・インドネシア・インド・メキシコにて主に日系中堅・中小企業様の海外進出や進出後の会計税務法務を中心とした運営支援業務を行っております。
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