令和5年10月24日
政策戦略本部長
世界においては、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格高騰の長期化、気候変動による自然災害の頻発・激甚化や生物多様性の損失など、国際情勢の不確実性が高まっているとともに、生成AIをはじめとするデジタル技術の飛躍的な進化が生じるなどの大きな社会的変化が起きつつある。
また、国内では、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行するなど社会経済活動が正常化しつつあり、積極的な交流人口の拡大や産業振興等を進めていく必要が高まっている一方で、長引く物価高騰や激甚化する自然災害への対応、深刻さを増す少子化、人口減少等の構造的課題への対応が求められるなど、本県は時代の大きな転換点に立っている。
本県の令和6年度当初予算の立案にあたっては、国内外の緊迫した情勢が続く中、地方財政の見通しが不透明であるものの、物価高騰対策や台風第7号災害からの創造的復興など早急に対処すべき課題の克服に全力を傾けるとともに、令和6年10月開催の「ねんりんピックはばたけ鳥取2024」の成功など、1人1人が大切にされ輝くふるさとづくりへ踏み出していかなければならない。
近未来を見据えた政策を立案するに当たっては、若い世代の発想を取り入れるとともに、デジタル社会の新たな手法を活用するなど、地域の活力を結集することが大切である。
その際、「財政誘導目標」を踏まえ、将来への負担をできる限り増やすことなく、持続可能な県政運営の道筋を堅持することとし、行財政改革の推進やスクラップ・アンド・ビルドの徹底など、引き続き、事業の大胆な見直しと重点化を図る。また、予算要求業務の省力化、負担軽減などの効率的な予算編成による働き方改革を進めるとともに、国の動向に注視しつつ、補正予算編成にも機動的に対処していく。
ついては、こうした令和6年度当初予算等の編成に係る基本的な考え方及び予算編成に当たり留意いただくべき事項について以下のとおり示す。
1 基本的な考え方
(1)県財政を取り巻く厳しい状況
令和6年度地方財政収支は、地方税収の増を見込み、実質的な地方交付税は減少する見通しとなっており、税収基盤が脆弱な本県では、地方交付税を合わせた一般財源の動向は不透明である。
このため、依然として高い水準にある公債費や高齢化による社会保障関係費の増加など様々な財政圧迫要因を抱えている中で、今後も本県では厳しい財政運営を強いられることを予想しなければならない状況であり、選択と集中をより一層進め、財政の健全化を推進する必要性が高まっている。
(2)徹底した事業見直しと重点施策の積極的な推進
県財政を取り巻く状況が厳しくなると見込まれる中で、冒頭に記載した「ふるさとの元気」「健康・安心」「人・暮らし」といった県政の重点施策に県の資源(財源・人員)を傾注する必要があるため、予算要求にあたっては、経費の精査や内容が重複・類似する事業の統廃合等による徹底した事業見直し、関係者との調整等を十分に行った上で、最小の経費で最大の成果を導くような事業の立案を積極的に行うこと。その際、単に事業予算だけではなく、事業を遂行する際のマンパワー等にも留意し、組織全体でのトータルコストの膨張は厳に慎むこと。
また、意義や効果の薄れた事業の見直しや類似事業の統廃合を積極的に行うため、新規事業はもとより全ての事業について、検証可能な成果指標を設定するとともに、費用対効果、必要性・緊急性等を考慮した上で、公共関与のあり方、持続可能性、国や市町村との役割分担などの視点で、思い切った事業の取捨選択をこれまで以上に徹底すること。
(3)物価高騰・賃上げ・人口減少対策など切れ目のない経済・社会対策
国は、10月中をめどに、物価高騰対策、持続的賃上げと地方の成長、国内投資促進、人口減少対策、国土強靱化など国民の安心・安全の5つを柱とする総合経済対策を取りまとめた上で、速やかに補正予算の編成に入る考えを示している。本県としても、関連する国の補正予算の情報収集を進めるとともに、この財源を活用して前倒しで計上すべき事業については、機動的に補正予算を編成することとする。
2 予算編成に当たっての留意事項
(1)政策戦略会議と「知事一発査定」
予算査定に先駆けて「政策戦略会議」等を開催し、戦略的課題や部局横断的な課題に対して、幹部間の連携により方針を検討するとともに、とっとり未来創造タスクフォースによる人口減少・子育て支援に関する提言をはじめ若い世代の発想を施策に反映すること。その際、部局を超えた議論を行い、部局の枠を超えた政策パッケージを立案すること。
また、政策戦略会議において検討する「政策戦略事業」については、年内は立案段階として十分な議論・検討、事業化に向けた論点整理を中心に行う期間に充てて予算要求を行った上で、働き方改革の観点から、「知事一発査定」を実施し、査定は知事の一段階だけとする。
なお、1月を「政策戦略事業」を中心とした予算編成に充てるため、これを除く「一般事業」については先行して予算要求を行い、1月に計上案をホームページで公開するとともに、「一般事業」の査定においても、政策戦略事業同様、知事レビューにおいて一発査定とする。
(2)作業の効率化、省力化による働き方改革の実現
予算要求業務における省力化、負担軽減を図るため、予算要求資料について真に必要なものを厳選し、データベースによる情報共有や既存資料の活用を徹底するとともに、更にペーパーレス化を図ること。
また、予算要求書と議案説明資料については、原則として同一の内容とし、議案説明資料のオートメーション作成機能(予算要求書からワンクリックで転記)の活用を図ること。
なお、財政課長聞取は原則行わないこととし、財政課が行う要求課からの聞取については、特に地方機関についてはオンラインを活用するなど、効率化を図ることとする。
(3)とっとり若者活躍局等の多様な主体との協働・連携
本県の予算は「県民とともに作る予算」であり、「鳥取県民参画基本条例」の趣旨を踏まえ、現場の意見を積極的に取り入れるとともに、とっとり若者活躍局など若者の柔軟な発想で政策を再構成しつつ、議会からの指摘や提言などを適切に要求に反映すること。
また、県民サービスの向上やコスト削減の観点から効果が期待できる場合は、アウトソーシングや民間活力の活用、公民連携による事業実施について検討するとともに、一定規模以上の公共施設整備等の際には、「鳥取県PPP/PFI手法活用の優先的検討方針」に基づき、従来型手法(県の直営実施)に優先してPPP/PFI手法を検討すること。
さらに、NPO等の民間事業者との協働による地域活性化や地域課題の解決を効果的に進めるため、「民間提案事業サポートデスク」に寄せられた提案・相談に対する「鳥取県協働連携会議」での検証結果を可能な限り反映した要求を行うとともに、協働連携の具体的な手法の検討に当たっては、令和4年4月に策定された「鳥取県協働連携ガイドライン」を参考にすること。
(4)市町村の役割への配慮
市町村を通じて実施することが現実的、効果的と考えられる施策については、市町村における適切な判断に基づき予算措置等が円滑に行われるよう、令和6年度当初予算編成に当たっては十分に事前の相談・調整を行い、市町村のあるべき役割に応じて、一定の負担を求めること。
なお、既存施策であっても、事業の実施状況や現場、市町村からの意見等を踏まえて総点検を行い、市町村の関与や負担のあり方について検証を行うこと。
(5)国庫を含む財源確保の強化
厳しい財政状況の中で必要な事業を効率的に行うべく、様々なチャンネルを使って国の動向等についての情報収集・分析を徹底した上で、国庫補助金などの有利な財源措置を積極的に活用するとともに的確に予算に反映すること。
また、未利用財産の処分、環境の変化等により遊休化している県有資産の徹底的な洗い出しと利活用、広告料収入の確保、基金や特別会計の総点検、受益と負担の公平の観点から費用を徴収すべきものがないか等、新たな財源の確保について積極的に検討すること。
また、ふるさと納税による地域活性化をより一層進めるため、「クラウドファンディング型ふるさと納税」や「企業版ふるさと納税」の活用について、積極的に検討すること。
(6)鳥取県産業振興条例や鳥取県手話言語条例、あいサポート条例等を踏まえた対応
県内産業の育成による県内経済の発展と県民の雇用の確保を目的に制定された「鳥取県産業振興条例」の趣旨を踏まえ、県産品・県産材のより一層の活用に努めるほか、県内在住・県出身の人材、県内事業者の活用を意識した事業の組み立てを検討すること。
また、「鳥取県手話言語条例」、「あいサポート条例」及び「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の趣旨を踏まえ、手話通訳者及び要約筆記者の配置や点字版及び録音版の広報物の作成など必要な経費を見積もるなど、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の充実と情報アクセシビリティの保障に配慮するとともに、「障害者優先調達推進法」の趣旨を踏まえ、障がい者就労施設等から優先的に物品及び役務を調達するよう配慮すること。
さらに、令和3年の障害者差別解消法が改正により、いわゆる合理的配慮が令和6年4月からすべての事業者に義務化されることとなったことから、県が事業者に委託して開催する研修やイベント等においても合理的配慮の義務化を踏まえた事業内容を検討すること。
なお、予算要求に当たっては、ジェンダー平等や性の多様化の視点を踏まえること。
(7)予算編成過程の透明化
予算要求段階から予算編成過程を公開するため、事業名を含め県民へのわかりやすさを第一に考えた上で要求書を作成することとし、いわゆる行政用語や専門用語、外来語やカタカナ語、略語など、県民に分かりにくい表記がないように十分注意するとともに、必要に応じて注釈を加えること。