昭和55年(1980)11月23日、鳥取市用瀬町宮原で採集
歌詞
十七八なる姉さんが
唐傘片手に下駄をさげ
あちらに向いては ほやほやと
こちらに向いては にこにこと
ほやほやにこにこちょまちょまと
風呂屋の門にもちょと立てり
申し風呂屋の番頭さん
こらこら ここらに松竹梅なる湯はないか
長々風呂屋を務めれど
松竹梅なる湯は知らぬ
知らねば私が解きまする
熱けりゃ埋めではないかいなぁ
ぬるけりゃ炊けではないかいなぁ
さめれば待つではないかいな蝶よ花よと育てた娘)
(伝承者:明治30年生)
解説
盆歌として歌いながら踊ったものだとのことである。ちょっと笑いつつ落語でも聞いているような感じで、一種の盆踊り口説きといえる内容である。
以前はのど自慢の歌い手が、それぞれの地域にはいたもので、盆の季節ともなれば、村の老若男女が片手に団扇を持ち、浴衣姿で村の広場へ集まって、夜遅くまで盆踊りに興じたものであった。このような機会を捉えて、若い男女は親しくなり、恋愛に発展したという話も、古老からよく聞かされたものであった。
そのときに歌われるのが、盆踊り歌である。次のような短いものもある。
踊り踊るならお寺の門で
踊る片手で後生願う
けれども盆踊り口説きといった、かなり長いものもあった。「志賀団七」とか「八百屋お七」、あるいは「鈴木主水」といったのがそれである。
ここに紹介した「十七八なる姉さんが」の歌は、たしかに落語じみた笑いを誘う物語ではあるが、決して「志賀団七」などのような長編ではなく、短いものと長編ものとの中間といったところでもあろうか。