昭和55年(1980)11月23日、鳥取市用瀬町宮原で採集
歌詞
くるりくるりと回れよ車
わしが頼みの馬車車
(伝承者:明治30年生)
解説
唐臼を挽きながら歌う作業歌である。
作業をはかどらせようという気持ちが、このような詞章を生んだものといえよう。しかし、唐臼挽きは単調な夜なべ仕事であり、気分転換にどぎつい歌も準備されていた。同じ伝承者からうかがった歌に次のものもあった。
抱いて寝てくれ まだ世は夜中
明けりゃお寺の鐘が鳴る
また、島根県浜田市三隅町森溝の女性(明治22年生)からうかがったものに、次の詞章があった。
臼を挽く夜にゃ必ず来にゃれ
重かテゴしょと
言うて来にゃれ
テゴなる石見方言は「手伝う」のことなので、この歌の意味は次のようになる。
臼挽き作業をする夜には
必ず来てください
臼は重たいだろうから手伝ってあげるよ
と言って来てください
心を通わす異性を思って歌った詞章である。唐臼挽き歌に限らず、労作歌には、男女間の機微を歌った詞章がけっこう多いのである。
踊り踊る言うて親の前は出たが
実は貴方に会いに来た
(伝承者:島根県鹿足郡吉賀町下須・男性・明治44年生)
思う殿御がちらちらすれば
いらぬ水でも汲みに行く (同前)