昭和62年(1987)8月17日、智頭町芦津で採集
歌詞
高い山から雨が降る 雨じゃござらぬ
十七八の恋の涙が雨となる
濡れても心持ちは ヨシヨシ
(伝承者:昭和14年生)
解説
盆踊り歌には物語を口説くものと、短章型のものの二種類がある。
ここに挙げたのは短章型である。そして歌の最後の囃し詞から、「ヨシヨシ」と言われている歌であるという。
次の二つも仲間の歌である。
新保寺村の若い衆が
娘見るとて三吉回した娘は
三吉に気を取られ
首尾良く見られた ヨシヨシ
わしの生まれは大阪の
売られてきたのが
七つの歳から十五の春まで
この店で奉公している ヨシヨシ
なかなかロマンチックな歌である。伝承者のうたわれた詞章を見れば、年頃の娘心を表していることがわかる。降る雨を、恋の涙と見立てているのである。
詞章だけ紹介した二番目の「新保寺村の若い衆が」の歌でも、娘さんの気持ちを酌みながら、「首尾よく見られた」とよい結論になっている。そうして囃し詞の「ヨシヨシ」が、それなりに効いているからおもしろい、
最後の歌「わしの生まれは大阪育ち」であるが、この歌の主人公は、大阪育ちとあるから、大阪で生まれて、大阪で育ったことになる。ただ、ここから先に奉公先の店の地名がうたわれていないので、住んでいる所が判らない。あるいはそのまま、大阪のある店に勤めさせられているのかも知れないし、その可能性は大いにあるように思われるのではあるが、「そのまま大阪の店で」とか「京都の店で」などと地名を入れておくとよいような気がしてならないのは、筆者だけなのであろうか。