昭和62年(1987)8月17日、智頭町芦津で採集
歌詞
めでためでたが三つ重なりて
鶴は御門に巣を掛けなさる
亀はお庭で舞を舞う ヨイカンナ
(伝承者:昭和14年生)
解説
婚礼の席など高砂が出た後に歌われている。「ヨイカンナと言われる種類の歌である。他に次の二つの詞章がある。
鳶が舞います五条の橋の上
鳶じゃござらぬ弁慶つかむ牛若丸だよ ヨイカンナ
竹になりたや紫竹の竹に
元は尺八 中は横笛で
末は殿御さんの筆の軸 ヨイカンナ
鳶が舞います五条の橋の上
鳶じゃござらぬ弁慶つかむ牛若丸だよ ヨイカンナ
祝い歌としては、ここに挙げた「婚礼の席」でうたわれるものの他に「地搗き歌」「新築祝い歌」「大漁歌」などがあり、他にも適宜おめでたい祝いごとがあった場合、宴席で披露されることもあったに違いない。
「めでためでたが三つ重なりて」と「三」という数字が出て来るが、古来から三は、聖なる数字とされていた。子どもが生まれると、三日までに名前を付けたり、神棚にお供えする器を三宝といって三つの宝の字を宛てたり、子どもの成長を祝う行事を七五三といい三歳で宮参りをするなど、生活の場の至る所に「三」が生かされているのである。
やや変わったところでは、松江市で聞いた本人の秘密を知った子どもたちのからかい歌に、
ええこと聞いた 疾う聞いた
洞光寺山へ聞こえて 松が三本倒れて
洞光寺でらの小僧が
なんぼすけかあても かあても転んだ
というのがある。言霊信仰の影響で、神木である松を三本も倒したとされる、からかわれた子どもの面目は、これで丸つぶれといったところであろう。