昭和62年(1987)8月17日、智頭町芦津で採集
歌詞
めでためでたの若松様よ
若松様よ
枝も栄えて葉も茂る お目出度や
(伝承者:昭和14年生)
解説
家建ての建て前などで歌われる祝い歌である。めでたいことは、「若松様」なる詞章が一種の「返し」という歌い方で、繰り返されるところからも理解される。
地搗き作業は、家の建築にかかる前に、地面をしっかり固める作業の際に、作業のリズムを取りながら歌われる。
朗々と響く歌声を、建築主は、満面の笑みをたたえながら聞いたものであろう。もちろん歌の詞章は縁起を担ぎ、めでたい内容のものが選ばれたものである。他に次のような詞章も見られたようであった。
おまえ百までわしゃ九十九まで
共に白髪の生えるまで
ここの屋敷はめでたい屋敷
上から鶴が間合い下がり
下から亀が舞い上がる
鶴が持て来た盃を
亀が受けては鶴に差し
鶴が受けては亀に差す
ここの親方前から繁盛
今は若世でなお繁盛
旦那大黒 お内儀さんは恵比寿
中にいる子は福の神
わたしたち庶民のささやかな幸せを、このようにめでたい詞章を並べ上げて寿ぐ習性を、昔からわが国の人々は持っていたのである。
いまでこそ地搗き歌など、あまり聞かれなくなったが、新築完成後、祝いの宴席で、あるいは盛んに披露されているのではなかろうか。