昭和54年(1979)9月23日、三朝町曹源寺で採集
歌詞
こちの屋敷は繁盛な屋敷
繁盛な屋敷 鶴と亀とが舞い遊ぶ
オモシロヤ ヨイト ヨイト ヨイト
(伝承者:明治30年生)
解説
家を建てるため、土地を固めようと地締めを行うときの歌である。縁起のよい詞章でうたわれる。そうして新築にとりかかるのである。伝承者からうかがった別の詞章のがあるので紹介しておきたい。
こちのお背戸ににゃ三つ股榎
榎の実ゃならいで金がなる
めでためでたが三つ四つ五つ
五つ重なりゃ五葉の松
伝承者との出会いは劇的な思い出を持っている。この日、筆者は三朝町でわらべ歌を聴こうと、あちこちの家々を回ったが、どこでも断られてなかなか聴けなかった。夕方にもなってきたので、そろそろ辞めようかと思いながら、半ば諦めた気持ちで、最後の一軒と思って伝承者宅を訪れたところ、案に相違して色々の歌をうかがったばかりか、ご家族(明治35年生、大正6年生)からも収録させていただいた上に、夕食までよばれるという大歓迎を受けたばかりか、これから宿泊する旅館を探すという筆者の話に、「それならここに泊まりなさい」と宿泊までさせてくださったのであった。
口承文芸収録に執念を燃やしていた若い日の、見も知らぬ筆者に対するご一家のご好意であった。このときの筆者は44歳だったのである。これ以来、ご一家とは、まるで親戚のように親しく交流させていただいており、88歳になった筆者ではあるが、やはり電話をしたり、お宅から電話をいただいたりしている。人の縁は分からないものである。このようなつながりが、人生をどれだけ豊かにするか計り知れない。