昭和54年(1979)9月23日、三朝町下西谷で採集
歌詞
ほれて頼むに 時節を待てと
時節待つよじゃ 頼みゃせぬ
思い出しゃせぬ 切れたとなれば
里は萩坊主 露ほどに
踊りましょうな どなたによらず
踊りこの場が 果てるまで
そろたそろたよ 踊り子がそろた
稲の出穂より よくそろた
ちょいとここらで 調子を変えて
粗末ながらも 投げだし 投げ出しよ
お前百まで わしゃ九十九まで
共に白髪の生えるまで
ほれて頼むに 時節を待てと
時節待つよじゃ 頼みゃせぬ
君と別れて松原越せば
松の露やら涙やら(伝承者:明治34年生)
解説
盆踊りの歌には、物語に属する「口説き」と称する「八百屋お七」のような長編ものと、それ以外に、7・7・7・5の近世民謡調に属する短い詞章の歌も、いろいろある。この歌は後者になるものである。
突然、お宅にうかがった筆者に対して、「それでは近くの伝承者を呼びましょう」と、即座に対応くださって、気さくにやって来られた伝承者だった。四半世紀前に聞いた彼の歌であるが、若々しいお声が、保存しておいたカセットテープのお蔭で、今も懐かしくよみがえってくるのである。
このとき、天皇陛下の前で披露した「壁塗りさんこ踊り」や西洋安来、さんこ節、相撲甚句、盆歌、地締め歌、やんれ節、昔の食事の話などなど、実に豊かで多くの話や歌を披露してくださったものである。