昭和63年(1988)8月19日、三朝町大谷で採集
歌詞
くるりくるりと回れよ車
車 車よ 回れよ車
臼を引け引け 挽け挽け臼よ
臼を挽かねばまたままよ
(伝承者:明治40年生)
解説
臼挽き歌としてうかがった。音節を調べると7・7、3・4・7、7・7・7・5で一つになっていることが判る。近世民謡調の3単位で一曲となっているのである。
伝承者宅をお訪ねしたのは、労作歌を教えていただくためではなかった。本来は、民話を収録するのが目的だった。
米子工業高等専門学校の天神川流域の民俗調査団の一員として、筆者も参加しており、口承文芸を担当していた4泊5日の日程だった。この折の反省会で、「三朝町大谷の男性の話者は、とてもすばらしい。いろいろな話を知っておられる」と聞いた筆者は、次の日、その方をお訪ねしたのである。
一人暮らしでおられた伝承者は、筆者の訪問を歓迎してくださった。
次々貴重な話ゃ歌を教えてくださった。初日だけでは、まだ聴き足りなかった筆者は、さらに翌日、さらに2日をかけて足を運んだものである。こうして教えていただいた思い出は懐かしい。そうしてうかがったものを合計数で述べると昔話36話、わらべ歌7曲、労作歌4曲、言い伝え7,予兆4,年中行事3,唱え詞2,俚諺1ということになった。
ここに挙げた臼挽き歌は、収録初日にただ一つ歌っていただいていた曲ということになる。実際、伝承者の面目は昔話にあったということができる。語りの口調も穏やかで、しかも丁寧で、きめ細かい気配りの聞いた語りであった。