昭和63年(1988)8月21日、三朝町大谷で採集
歌詞
千石蒔きの苗をば
朝の間にと取り上げ
大山やまの桜は
八色に花が咲きあけ
(伝承者:明治40年生)
解説
田植えで歌われる作業歌である。縁起を担いで「千石蒔きの苗」とか、聖山である「大山」を詞章にしたりしているところが、田植えの神聖さをうかがわせているようだ。
田植え歌には二種類ある。田の神・サンバイサマの誕生をうたった口説き的な流れを持つ長編ものと、気分に合わせて適宜うたわれる短い歌との二つである。鳥取県中部では、主として短章的なものがうたわれているようであるが、ここにある後の歌は、大山歌と呼ばれている仲間になり、比較的多くの類歌が見られるようだ。『鳥取県の民謡』(鳥取県教育委員会1986年)から関金町大鳥居地区の歌を紹介する(130ページ)。
大山山の桜は
花は八色に咲きわけ
痛や痛や痛腰や
袴の腰で痛腰や
植田の中で立つのは
田の草取りか鳥追いか
大山山で光るは
月か星か螢か
晩になると血盗りが
笠のまわりをまわるよ
大持ち大窪植えたら
しまわせますよ早乙女衆
まだまだ続くが省略する。注釈に、「血盗り」とはブヨの意である。と記されていた。他に北栄町みどり丘の田植え歌にも「大山…」の歌が紹介されている。