昭和61年(1986)8月4日、大山町羽田井で採集
歌詞
盆は来い来い 正月は来るな
歳の寄るのが なさけない
盆と正月 一度にござれ
昼は羽根つく 夜は踊る
(伝承者:明治44年生)
解説
盆踊り歌であるが、盆の雰囲気がよく出ている。二番目の歌は最初の歌で正月をけなしているので、その言い訳をするような内容になっているのが面白い。
以前は盆の季節には、盆踊りが盛んだった。村の広場で舞台を作り、その上で音頭取りが歌を口説き、浴衣を着て団扇片手に老いも若きも男も女も晴れて踊りの輪の中へ入って踊り明かしたものである。残念ながら、コロナ禍と共にこのような風俗も見られなくなる傾向であるのは寂しい。
ところで『鳥取県の民謡』(鳥取県教育委員会1988年)の西部地区を見ると、盆踊り歌には、長編の鈴木主水口説、佐倉宗五郎口説、お吉清佐口説。石童丸口説、重兵衛口説、お杉口説、小源太口説などが紹介されているが、一方、基本形を近世民謡調とするのもいくつか見られる。最初に紹介したのがそれであるが、他にもいくつか囃し言葉を省略して紹介しておく。
踊り踊らば品よく踊れ
品のよいのを嫁にとろ
調子揃えてしゃんしゃとやれば
いかな大名も立ち止まる
来るか来るかと待たせておいて
他へ逸れたか夏の雨
主は三夜の三日月さまか
宵にちらりと見たばかり
親の意見と茄子の花は
千に一つのあだもない(以下省略)