平成7年(1995)4月4日、米子市今在家で採集
歌詞
あんた済まんけど 苗持つさまよ
苗が二三把足りませぬ
足りませぬ 苗が二三把足りませぬ
(伝承者:大正元年生)
解説
田植え作業の最中、苗配り担当の者に向かって苦情を述べる会話の一コマを、切りとった詞章の歌である。実際、そのような情景もよく見られたもののように思われ、そこを田植え歌に読み込むしたたかさに、多忙な中にもユーモアの精神を忘れないのどかさを、それなりに愉快に感じるのは筆者だけではあるまい。
『鳥取県の民謡』(鳥取県教育委員会1988年)に掲載された、西部地区での田植え歌のいくつかを紹介しておく。まずは日野郡江府町吉原の方(明治30年生)と同町俣野の方(明治43年生)の歌。基本形だけ記す。
歌いなされよ お歌いなされ
歌でご器量が下がりゃせぬ
お前よいがな 両手に花を
わたしゃ片手に しおれ花
咲いた花より咲く花よりも
咲いてしおれた花がよい
惚れてみなさい金ないけれど
金で買われぬ実がある
次に西伯郡伯耆町口別所の方(明治44年生)の歌。
腰の痛さよ この田の長さ
四月五月の 日の長さ
歌いなされよ お歌いなされ
歌は仕事のまぎらかし