これまでの鳥取県の財政改革

これまでの県財政を振り返って

 本県ではバブル経済の崩壊後、国の景気対策に呼応して公共事業を積極的に実施し、道路や河川、社会福祉施設など、様々な社会資本を整備してきました。
 県がこうした公共事業の増に踏み切ったのは、景気対策を行うために借りた借金の返済のかなりの部分を地方交付税で措置するとされていたからです。しかしながら、地方交付税は増額になるどころか頭打ちとなり、さらには平成16年から18年の3か年に地方分権の名の下に実行された三位一体改革により、平成18年度には平成10年度の水準まで減らされてしまいました。結果、県政には、公共事業を行うために必要とした多額の県債(借金)が残されることとなりました。

 こうした状況を踏まえ、本県では、給与制度や組織体制の見直しをはじめとする人件費の削減や事業手法・内容の見直し、未利用財産の売却等の行財政改革を進めてきました。これにより、平成13年頃には4,600億円規模となっていた予算額の規模については近年では3,000億円台半ばにスリム化しており、公共事業についても、「公共事業の一件審査」等による見直しを行った結果、かつての規模から大幅にスリム化(ピークの平成10年度:約1,658億円→近年:700~800億円程度)しています。また、県債についても、国による財政的な手当(交付税措置)が比較的小さいものを中心に、残高を縮小することができています。(ピークのH25年度:6,647億円→近年:6,000億円強)
 こうした不断の取組により、足許の県財政は何とか比較的健全な状態を堅持することができていますが、激甚化する災害への対応や、今後見込まれる少子高齢化・人口減少に対応した社会生活基盤の維持、これまでに整備した公共施設の老朽化対策や長期化する人件費や物価高騰への対応等、県政が取り組むべき課題は多岐にわたっている状況です。近年ではこうした問題に対応すべく、相次ぐ自然災害へ対応するための交付税措置率の高い起債を活用した防災対策や社会保障施策の充実、中山間地域での暮らしの維持に向けた各種対策に関する予算を積極的に計上しているところであり、こうしたトレンドはこれからも続くものと思われます。
 国の財政状況も芳しくなく、地方交付税の大幅な増も見込めない中にあっては、引き続き、徹底した行財政改革に取り組みつつ、将来にわたって安定的な行政サービスを提供できるようにする責任を果たすことが必要だと考えています。


公共事業の一件審査の実施

  平成12年度までは、公共事業は膨大な箇所と金額があるため、予算を計上するときに、国の予算の伸び率などを参考にしながら、総額の議論しかしていませんでした。これは他の都道府県もほぼ同様のやり方です。しかし、鳥取県では平成13年度から、一件ごとにその箇所の必要性や緊急性を厳しく審査し、整備手法も見直して予算計上することとし、生命・財産の保護、安全に関わる箇所、事業効果が早期に現れる箇所等を優先し、緊急の対応が必要でないものは進度を調整しています。

 

公共事業の主な見直し例
  • 林道事業の休止

     

    効果発現が見込めないもの、作業道などで代替ができそうなものなどについて、平成18年度に最低限の事業を実施し休止を明確化。

     

  • 道路事業の工程調整

     

    道路事業については、原則3年サイクル(1年目:測量設計、2年目:用地買収、3年目以降工事着手)を基本とし、無理のない工程となるよう工事内容を調整。

シーリングの廃止と柔軟な予算計上

   シーリングとは、予算要求をする段階であらかじめ財政当局が「○○部はここまでしか要求してはいけませんよ」ということを決めておくことです。国も導入しており、他の都道府県もなんらかの形で導入している手法です。シーリングは予算を抑えるために便利なやり方ではありますが、「要求の段階で金額が決められるため、社会経済の実情にあわせた必要な事業に取り組めない」「不要な事業であっても基準の中であれば財政当局もあまり査定しない」という弊害もはらんでいます。
   鳥取県では平成12年度当初予算からシーリングを廃止し、各部局からの要求内容を踏まえ、知事査定により必要性や優先度を判断して予算計上することとしています。
 

予算編成過程の公開とペーパーレス化、業務効率化

   予算要求には、従来、膨大な量の紙が使われていました。要求部局が要求書とその付属資料を作成し財政当局に提出して、予算協議が行われていました。県には数千の事業がありますので、資料まで含めると一回の当初予算が終了するとダンボール箱で数十個分の紙が使用されていました。このため、平成13年度の補正予算から、庁内LAN内のデータベースに手作りの予算要求システムを作成し、ペーパーレスで予算作業を行うようになりました。この結果、大きな紙資源の削減につながりました。令和元年度の補正予算からは財政課長聞き取りの廃止や議案説明資料のオートメーション作成など、抜本的な業務効率化も進め、効率化により生み出した時間を活用して県民のための政策立案を行うとともに迅速な予算編成につなげています。(本県の『働き方改革』型の予算編成は令和2年度全国知事会先進政策バンクの優秀政策に選定)
   また、予算要求をデータベースで行うことにしたため、簡単にWEB上に予算の公開をすることが可能となり、平成15年度6月補正予算からは全ての事業の予算の公開を始めました。さらに平成17年度当初予算からは、査定後の予算だけではなく要求段階においても全ての事業の額と内容を公開することとしました。この結果、予算編成に県民の皆様のご意見を柔軟に反映させることができるようになりました。
予算編成過程の公開のページへのリンク
  

Copyright(C) 2006~ 鳥取県(Tottori Prefectural Government) All Rights Reserved. 法人番号 7000020310000