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学びの環境づくり~「心とからだ いきいき(食・読・遊・寝)キャンペーン」~

鳥取県教育委員会 委員 今出 コズエ 今出委員の写真


 鳥取県教育委員会は、「自立した 心豊かな 人づくり ~郷土を愛し 自ら学ぶ知・徳・体バランスのとれた人づくり~」を基本理念とし、子どもたちの学力の向上・健全育成をめざしています。
 学びを助ける環境づくりについて考えてみました。

「心とからだ いきいき(食・読・遊・寝)キャンペーン」の推進

 県教育委員会では、知・徳・体のバランスのとれた子どもたちを育てるために、子どもの学びの基盤となり、支えるものとして、「心とからだ いきいき(食・読・遊・寝)キャンペーン」の活動を大切にしてきています。この内容は、以前は、家庭で当たり前のこととして親がしつけとしてきたことといっていいでしょう。しかし、時代の変化・価値観の多様化の中でそれぞれの家庭でのしつけが難しくなってきています。
 「心とからだい きいき(食・読・遊・寝)キャンペーン」は平成17年度より取り組み、約3年を迎えました。広報活動の工夫、「優れた草の根実践」の表彰などにより、県内に広まりつつありますが、教育委員会による平成19年度の取り組みの評価は、残念ながら、認知率は高いが、実践の評価が低いということが分かりました。学びを確かにするためには、根気強く継続していきたい内容です。6本の柱を中心に、基本的な生活習慣の定着をめざしています。

1 しっかり朝食を食べよう

 朝ごはんを食べずに学校に来る子が、以前は驚くほど多かったのです。最近では、保護者の皆さんの意識も変わり、また、この運動が始まってから、朝食抜きの子どもは確実に減ってきました。朝ごはんを食べていないと、育ち盛りの子どもたちは、パワーがなくて、午前中4時限目の勉強に身が入りません。集中力も下がります。いらいらして、勉強がわからなくなってしまうことも当然出てきます。少しずつ、「食」への関心が高まり、広く「食育」をテーマに取り組んでいる園・学校、PTAも出てきました。

2 じっくり本を読もう

 学校もPTAも地域も取り組みが以前とはずいぶん変わりました。県民の皆さんの読書に対する自覚がとても高まってきているからです。鳥取県の特色として、胸を張りたいものです。ボランティアで読み聞かせをしている人も年々増加しています。親子読書で貴重な時間を過ごしているご家族もあります。
 読書の楽しさを修得した子どもは、宝物の引き出しをいっぱい持っているようなものです。「全校一斉朝の10分間読書」の影響は大きいものがあります。現在、日常の読書へと広がってきていると感じます。本が読める子は、学びのスタートが、違うといっても過言ではないでしょう。関心・意欲・思考力・理解力・集中力・想像力・創造力・表現力などだれもが望んでいる欲しい力をいっぱい持っています。また、本を読むことで、自分では経験できない人や物、出来事に出会い、自分を見つめ物の見方を広くし、よりよい自分に変わっていこうとします。今、やっていることが、花開くには時間がかかります。しかし、あきらめないで、根気強く・続ければすごい子どもたちが育っていくと思います。
 高い学力を持つと評価されているフィンランドの教育の特色としても読書の力があると言われています。

3 外で元気に遊ぼう

 環境の変化が大きく、安心して子どもたちを外で遊ばせることができない世の中になってしまいました。子どもにとっての遊びは学びそのものであり、成長の過程で欠かせないものです。友達と外で遊ぶことがもう、うれしくて楽しくてしようがない子どもは幸せです。「遊び」は、学びの要素をいっぱい持っています。関心・意欲・自信・勇気・我慢・工夫する力・協調する力・協力・体力の向上・自立心・創造性など。
 しかし、現実的には、なかなか子どもを外で遊ばせるのは難しいことです。お父さん・お母さんとのキャッチボール・サッカー・自転車遊び・川遊びなどの自然体験など保護者のみなさんの子どもへの積極的な日常のかかわりを願うところです。米子市の様子の一部をご紹介します。

  • 弓ヶ浜公園
     県内には、多くの公園があります。弓ヶ浜公園は、米子市にある公園の一つですが、公園の敷地は広く、ゆったりとしています。子どもたちの遊びたい遊具やグラウンドがあり、お父さん・お母さんも安心してわが子と遊び、遊びの様子を見守っておられます。特に土・日になると、米子市や近隣の町・村から来られる子どもやお父さんお母さん・祖父母で賑わいます。親子のふれあいの楽しさを実感できます。
     地域の皆様の力で取り組まれているおもしろい活動もあります。
  • プレーパーク
     米子市児童文化センター内にある「みなとやまプレーパーク」は、「子どもたちが自分の責任で自由に遊ぶ場」という理念があります。「ルールを守って、火おこし泥遊び、屋根のぼり基地作りなど屋外でどろんこになって遊びましょう。」という子どもたちへの呼びかけは、魅力的です。プレーパークは、日本では、東京世田谷区から始まり、盛んな活動がなされています。自分の責任で自由に遊ぶというのが特徴です。禁止事項をいっぱい作ると遊びがおもしろくないからです。プレーパークの意義とか様子はインターネットに紹介されています。
     福米東小学校区の「おやじの会」でも、お父さんたちが、学校の遊び場を整備し、プレーパークの考え方を取り入れ、外遊びの場を提供しておられます。今年5月には公民館活動と連携し、大掛かりなプレーパークが実施されたそうです。
     また、Jリーグ昇格を目指すガイナーレ鳥取が地域の方と協力して行っている、「復活公園遊び」(次の項で説明)が、校区の公園で毎週、水曜日に行われています。本小学校区に限らず、地域の方が子どもたちを見守り、よく育ててくださっていると思います。
  • 「復活公園遊び」
     「お父さんやお母さんが子どもの頃いつもしていた遊びをしよう。」ということです。ルールブックが作られ、「ろくむし」「ペッタイ」「かたき」「チューブ」「かんけり」「陣とり」などが紹介されています。遊びの名前を聞いただけで、子どもの頃、日が暮れるまで夢中で遊んだ日が、友達の顔と共に懐かしく思い出されます。前述しましたように、地域の人が近くの公園で子どもと一緒に遊んでくださっています。遊びを覚えた子どもは、きっと、学校で友達に教えていることでしょう。


4 たっぷり寝よう

 「寝る子は育つ」と昔から言われてきましたが、大人の社会が夜型になるにしたがって、子どもたちの睡眠時間が、驚くほど減ってきました。小学生が午後11時ごろは平気、中には午前1時ごろに眠る子どももそう珍しくないという現状です。子どもにとっての寝るという行為は、大人と違って、十分眠ることで心も身体も成長させるということを正しく認識する必要があります。時折、夜10時ごろレンタルビデオ店やスーパー、コンビニエンスストアにいる子どもがいます。明るい照明の下で、子どもは声高くしゃべったり、走り回ったりして、興奮状態です。家に帰っても、なかなか寝付けないだろうと思います。
 質の良い眠りの環境を意識的につくりたいものです。

 

5 長時間テレビを見るのはやめよう
 (インターネットや携帯電話はルールやマナーを守って使おう)

 土・日以外の普通の日でさえ、一日4・5時間、テレビを見たりテレビゲームをしたりしている子どもがいます。学校から帰る時間から寝る時間までを考えて、そんなにテレビをみたりテレビゲームをしたりする時間があるのかと驚きます。睡眠時間を減らし、家庭学習はさっとやり、時には全然せず、家族との会話もあまりしないという、健康的ではない姿が浮かびます。
 もう10年以上も前になりますが、鳥取大学医学部小児科のT先生たちは、大学病院に診察に来る子どもたちの異変に気づいておられました。キレる子どもたちが全国的にも問題になってきた頃です。顔に精気がなく、目に力がなく、行動に落ち着きがなく、すぐキレる症状が特徴でした。経過観察の結果、長時間テレビを見たり、テレビゲームをしたりしている子にこの症状が強く見られることが分かりました。視聴時間を減らす指導の結果、子どもたちに変化が見られ症状は改善し始めました。長時間のテレビ視聴は、脳の働きや発達を阻害するということを聞きました。T先生は全国の小児科学会の先生たちと、「2才までは、テレビを見せるのはやめよう。テレビは、選んで見せよう。」という全国運動を続けておられます。県内でも、学校関係者・保護者・児童・生徒を対象に何回も講演をいただきました。
 この問題及びインターネットや携帯電話の活用とあわせて、大きな課題であり、多方面からの指摘がなされています。子どもたちの学力向上の課題の中に、家庭学習をしない子どもが多いということがあがっています。なぜ、勉強をしないのでしょう。手軽に手に入る快楽や喜びを選び、興味や関心のあるテレビやゲームや携帯電話に時間を費やしています。努力したり、我慢したりして得た喜びのを体験をさせ、興味や関心を価値ある方向に高めさせたいものです。オリンピックで活躍した選手は、夢や目標がはっきりしています。つらい練習をも耐え切る力を発揮します。勉強する意味が見えたとき、学習に向かう姿勢ができてくるのです。指導者や保護者の適切なアドバイスや評価が重要です。

6 服装を整えよう

 「高校生マナーアップさわやか運動」は、「さわやかなあいさつ・さわやかな服装・さわやかなマナー」を合言葉に、広がりを見せています。
 学習でもスポーツでも芸術でもよい成果をあげたり、よい仕事をしようと思ったりしたら、3つの構えが必要だといわれています。「心構え」「物構え」「身構え」です。服装を整えるのは、学生としてしっかりと勉強しようとする身構えです。服装は勉強と関係がないと勘違いしている生徒には、スポーツを例にして説明するとよく理解できるでしょう。


 「心とからだ いきいき(食・読・遊・寝)キャンペーン」の取り組みの実態としては、各学校・地域・家庭それぞれが、食育、親子読書、ノーテレビ・ゲームデー、早寝・早起きなど実践しておられるところも増えてきています。一つ出来るようになると、別のところにもよい影響が見られてきたというご家庭もあります。家庭の事情もあるので取り組めるところからとりかかられたらと願っています。これらの成果が上がるのには時間がかかりますが、最近の調査では、基本的な生活習慣の確立が、知の部分の学力の面で、相関関係があることが明確になってきています。脳科学が発達し、医学的にもその大切さが証明されてきてもいます。わたくしは子育ての講演の依頼をいただくことがあると、「心とからだ いきいき(食・読・遊・寝)キャンペーン」の話をするようにしています。基本的な生活習慣が、学校での学びの元になることを話すと、保護者の方は、改めて家庭教育の大切さを認識されます。県教育委員会の広報「とっとり夢ひろば」などにおいて、学力と基本的生活習慣の定着との相関関係が掲載されています。
 全県の子どもたちの活動を知るのは、報道関係を通してのことが多いのですが、子どもたちのすばらしい成長を感じることが多くあります。この頃の話題では、先月、県内の高校生と大学生による「鳥取県の次世代を担う学生議会」が県議会議場で行なわれたということです。議長を始め、問題提起者・答弁者すべて生徒・学生にまかせてありました。知事さん、副知事さん、教育長さんがコメントをされるという方法でした。問題提起者は自分の持っている課題、広く鳥取県の課題などをしっかりと提起されていました。問題提起は県庁の職員に問い合わせたりしてしっかりとした内容であり、発表の態度も立派でした。高校生・大学生がしっかりと育っているのを感じうれしく思いました。政治に関心を持つ学生ができたことでしょう。
 「環境は人をつくる」のです。わたくしたち大人も「心とからだ いきいき(食・読・遊・寝)キャンペーン」の趣旨を理解し、共感いただいて、この活動を自ら実践していただくと県内にもっと広がると思います。子どもにとっての良い環境づくりを心がけたいものです。

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