教育委員 佐伯 啓子
8月末に大原美術館を訪れる機会に恵まれ、本当に久しぶりに出かけました。イブニングツアーの申し込みがしてあり、館内は私たち関係者だけで、限られた時間ではありましたが、ゆったりと鑑賞できました。学芸員の方が付き添ってポイントを押さえながら説明をしてくださったので、中身の濃いひとときになりました。
これまでも美術館や博物館を訪れ、外国ではガイドさんの案内を受けたりはしましたが、学芸員の方の説明を聞く機会はほとんどなく、今回は貴重な体験をさせていただきました。絵が描かれた年代、その時の画家の状況、取り巻く時代背景等について、わかりやすく話をしてくださり、個人で鑑賞する際には、思いも及ばないことが、情報として入ってくることになり、絵画の見方も違ってきます。ほとんど知識がなく表面的に観てしまいがちな私にとって、学芸員の方のお話を聴くことで、気付かぬままに通り過ぎてしまうかもしれない絵画のもっている意味を知って、見入ってしまうことになります。学芸員の方の作品に対する思いも伝わってきましたし、限られた時間の中で、全館を巡ることもでき、美術館における学芸員の方の役割の大きさを改めて実感いたしました。
館長さんの最後のあいさつの中で、大原美術館がなさっている教育的な活動に触れられました。後日調べてみると、教育普及活動として、「学校まるごと美術館」(休館日に近くの小学校の全校児童が来館し、事前に教員と美術館スタッフが打ち合わせをしたプログラムを教員が進行する。)、「未就学児童対象プログラム」(年間計画に沿って園児が複数回訪れ体験活動をする。)、「チルドレン・アート・ミュージアム」(毎年8月の土、日に美術館全体を使って参加体験型学習ができる。)、「学校との連携」(美術館を活用するためのプログラムがティーチャーズ・ガイドとしてまとめられている。)など、子どもたちのためのプログラムがたくさん用意されていることがわかりました。県立美術館ではラーニングセンターとしての機能を大切にしたいと考えて取り組んでいこうとしていますので、同じような志に共感いたしました。
9月29日には、「じゆう劇場」の公演が米子の公会堂であり出かけました。演技もですが、ストーリーの中で語られる言葉や、公演の後のトークで、演者の方の体験や思い、願いを聴くことができて、貴重なひとときを過ごすことができました。
芸術に直接触れるという体験は、日常生活の中では得られない、他者の思いや、自身のことについて内省してみることができる機会になります。子どもたちには、美術作品や演劇、音楽などに触れて、感性に響く体験を積んでほしいと願っています。