防災・危機管理情報


1 経緯

 「県民の声」(H21.1.19受付)を通じて、県(教育委員会)が発行した刊行物を「鳥取県文化財保存協会」が有償で販売している実態があること、また県自ら有償販売しない理由、県と当該団体との関係等について疑義がある旨の指摘がなされた。

2 調査方法

 文化財課の関係職員から「鳥取県文化財保存協会」の業務内容、県と団体との関係等 について聞き取りを行うとともに、会計書類及び団体名義の通帳管理の状況を確認した。

3 調査結果

(1)団体の概要

ア 名称

鳥取県文化財保存協会

イ 設立経緯

昭和37年4月設立
 県内の文化財の維持保存、顕彰につとめ、文化の発展に寄与することを目的として、県内の文化財所有者管理者等により組織された任意団体である。
 以後、5回の会則改正を経て、現在に至っている。
 事務局は、設立当初から県庁(教育委員会事務局)内におかれている。

ウ 役員

(平成20年度)
会長
鳥取県文化財保護審議会会長
副会長
鳥取県教育委員会事務局文化財課長
事務局長
鳥取県教育委員会事務局文化財課歴史遺産室長
監事
文化財保有者管理者外 2名
会員
県内文化財保有者管理者、鳥取県職員等 24名

エ 活動内容

設立当初の会則によると、協会の行う事業は次のとおりである
  • 文化財の現状を調査し、これが保存に必要な対策を講ずること。
  • 文化財の保存に関し、当局に建議請願すること。
  • 文化財保存の必要を一般社会に宣伝補導すること。
  • 必要に応じ書籍を出版すること。
  • 随時、展覧会又は講演会を開催すること。
その後、改正を経て現在の会則では、次のとおりである。
  • 文化財の現状を調査し、保存に必要な対策を講ずること。
  • 文化財の保存に関し、必要な提案をすること。
  • 文化財保存の必要を広く社会に周知すること。
  • 書籍を出版・頒布すること。
  • 講演会・研修会等を開催すること。
  • ふるさと文化再興事業に関すること。
このうち、現在協会として活動実績のあるものは、次のとおりである。
○書籍を出版・頒布すること。
  • 県発行の文化財関係図書類について、増刷及び販売(有償)

  • ○講演会・研修会等を開催すること。
  • 協会主催の研修会の実施

  • ○ふるさと文化再興事業に関すること。
  • 文化庁委嘱事業「ふるさと文化再興事業」の受託団体となり、県内の伝統文化保存団体の支援を実施
  •  

    オ 収支状況

    (平成19年度決算)
    収入 図書販売

    621,130円

    ふるさと文化振興事業

    16,282,450円

    預金利息その他

    5,708円

    前年度繰越

    569,776円

    17,479,064円


    支出 図書印刷(増刷)

    680,138円

    ふるさと文化振興事業

    16,282,450円

    手数料その他

    91,469円

    前年度繰越

    425,007円

    17,479,064円

     
  • 設立当初は、会員の会費収入もあったが、現在は会費制はとっていない。
  • 図書販売に関しては、販売残部が相当数あり、単年度収支は赤字となっている。
    このため、過去の会費収入等による繰越金により経費を賄っている状況である。
  • ふるさと文化再興事業は、文化庁の委嘱事業であり、県内の伝統文化保存団体が実施する伝統文化活動を支援している。
  •  

    カ 会計処理状況

    • 事務局長により協会公印管理、通帳管理が行われている。
    • 通帳は、「図書販売」に関するもの(2冊)、「ふるさと文化再興事業」に関するもの(1冊)が保管され、それぞれ別会計として、適正に処理されている。
    • 図書印刷に係る事務局内の決裁手続きは適正に実施されている。
    • 領収書等帳票類は適正に管理されている。

    キ 監査

    • 会計監査は、監事2名より実施され、役員会で監査報告されている。
    • 監事は、事務局となっている鳥取県教育委員会文化財課の職員以外の者が選任されている。

    (2)協会による図書販売の概要

    ア 販売している刊行物

    弥生時代の遺跡関係の図書類を主体に販売している。

    刊行物

    19年度末残部数

    (平成19年度新規印刷分)

    「とっとり弥生の王国の謎を解く論文・アイデア作品集2」

    210

    「海と弥生人シンポジウム」

    62

    「とっとり倭人伝シンポジウム」

    326

    「私たちを取り巻く歴史的環境」

    240

    (平成18年度以前印刷分)  
    「青谷上寺地遺跡発掘ノート」

    78

    「大山町・淀江町文化財ガイドブック」

    216

    「鳥取県文化財調査報告書第17集」

    12

    「鳥取県文化財調査報告書第18集」

    43

    「日本海を望む弥生の王国」

    42

    「とっとり弥生の王国の謎を解く論文・アイデア作品集」

    331

    「史跡妻木晩田遺跡第4次発掘調査報告書」

    24

    「史跡妻木晩田遺跡第8・11・13次発掘調査報告書」

    33

    「妻木晩田遺跡発掘調査研究年報2003」

    30

    「妻木晩田遺跡発掘調査研究年報2004」

    36

    「妻木晩田遺跡発掘調査研究年報2006」

    「日本海(東海)がつなぐ鉄の文化」

    12

    「倭人の生きた環境-山陰弥生時代の人と自然環境」

    144



    イ 販売取扱場所

    直売
    • 鳥取県文化財保存協会(本部)……県教委文化財課内、シンポジウム会場
    • 鳥取県文化財保存協会 (妻木晩田支部)……県教委妻木晩田遺跡事務所内

    販売委託
    販売委託契約又は販売依頼により、次の販売取扱所で販売している。
    • 青谷ようこそ館(青谷町商工会)
    • 妻木晩田遺跡物産振興会
    • 米子市立山陰歴史館
    • 倉吉博物館
    • 鳥取市歴史博物館やまびこ館
    • 鳥取県立博物館振興会(県立博物館内)
    • 島根県立八雲立つ風土記の丘>

    ウ 印刷単価・販売単価の設定

    印刷単価
    • 印刷単価の設定は、県印刷物(無償配布分)の印刷業者と、無償分と同じ単価で契約している。
    販売単価
    • 印刷物が完売した時点で、販売収入と販売経費(印刷代+販売委託手数料)が均等することを基本としている。
      このため、販売単価は、印刷経費(見本分含む)と販売委託手数料の合計額を印刷部数で除した単価を基本としている。
    • 販売委託手数料は、販売代金の10%~20%で設定している。

    エ 積算方法

    • 委託販売分については、年度末時点の販売実績をもとに、売上金額(手数料を除いた金額)を協会の銀行口座に振り込みしている。
    • 販売残部は、契約延長手続きを行い、引き続き各販売所で販売している。

    オ 販売収入の使途

    図書販売による収入は、新たな増刷印刷経費に充当している。

    カ 協会販売の情報提供

     協会の概要、協会の販売刊行物の情報を県のHP等を通じて提供することは特に行っていない。県HPでは、文化財課青谷上寺地遺跡のコーナーに「第2回とっとり弥生の王国の謎を解く論文・アイディア作品集」の販売元として協会名のみ紹介されている。

     県民の声を通じて指摘のあった次の冊子についても上記のとおりであり、決裁文書、関係帳票類も適正に整理されている。

    ○「とっとり弥生の王国の謎を解く論文・アイデア作品集」
  • 県は、作品入賞者や県内の学校、図書館等関係機関への無償頒布分のみ印刷し、配布した。
  • 協会は、有償分を増刷し、協会の妻木晩田支部等で販売している。
  •  

    ○「とっとり倭人伝シンポジウム」

  • 平成20年2月9日、名古屋市で開催されたシンポジウム(県主催)に併せて協会が発行した。シンポジウムでは印刷原価である500円で販売した。
  • シンポジウム終了後には、鳥取県立博物館振興会(県立博物館内)等の販売委託先において委託手数料等を含めた単価で販売している。

  • (3)県刊行物作成要領(平成18年6月28日付策定、担当:企画部広報課)との関係

    ア 要領の概要

    県が発行する刊行物の基本的事務手続、情報管理、有償頒布の取扱い等について定める
    • 協議……刊行物DBを通じて、財政課長へ印刷概要の事前協議
    • 情報管理……頒布価格、頒布部数等の情報公開
    • 有償頒布の取扱い……県民室及び各県民局で一元的に管理、販売
       (平成19年4月1日要領改正により、刊行物作成課でも販売可能となる。)

    イ 協会刊行物と要領との関係

     県(文化財課)では、要領に従い、発行内容や規格、有償・無償配布別の部数等について財政課の事前協議を踏まえ、刊行物の印刷、配布手続きを進めている。
     指摘のあった、弥生時代の遺跡関係の図書類の一部に関しても、学校や図書館等の関係機関への無償配布分については、要領による手続きを進めている。
     しかし、有償配布分については、県の要領ではなく、協会内部の決裁手続きに基づいて、県に代わり協会が増刷を行い、協会刊行物として、要領上の販売取扱所(担当課、県民室、各県民局)以外の場所(上記2のイの場所)で販売している。


    ウ 上記イの経緯

     県で発行する有償刊行物のあり方については、平成18年に行政監察監が行った「不適正な経理処理による資金造成等に関する調査結果」において、有償図書類の発行・販売を一元的に管理し、増刷等にも予算要求なく対応可能とする等、機動的な仕組みについて検討すべきであるとの指摘がなされたところである。
     この指摘を受け、県では従来から取り組んでいる標準事務費による機動的な対応と併せて、有償の県刊行物の販売取扱いを県民室及び各県民局以外に、新たに刊行物担当課でも行えるように要領の改正を行ったところである。(平成19年4月1日要領改正)
     刊行物作成要領の改正を踏まえて、文化財課では、協会で行っていた県刊行物の増刷(有償)についても、当該課で一元的に発行・管理することを検討した。
     しかし、弥生時代の遺跡関係の図書類の一部については、県民の利便性を考慮し、従来どおり遺跡現場近辺の物産館等での展示、販売を継続することとした。
     このため、この図書類については、県の要領の手続きによらず、協会刊行物として発行、販売している。

    (4)公私の区分の実態

    ア 県職員の従事実態

     協会の事務には、文化財課長(協会副会長)、文化財課歴史遺産室長(協会事務局長)、文化財課職員(協会事務局員)が従事している。
     協会の業務内容は、上記(1)のエのとおり、文化庁委嘱事業の実施や遺跡関係図書類の有償頒布事務等県内の伝統文化保存や文化財の周知等に資するものであり、公務とみなして勤務時間に従事しているところである。
     なお、文化財課歴史遺産室長の事務分掌には、文化財保存協会に関することが定められている。

    イ 県費外会計処理の実態

     県教育委員会では平成20年6月から7月にかけて、事務局内での県費外会計の実態を調査し、各所属で管理している県費外会計の名称、保有金額、決算額、会計の内容及び経理の実態を把握したところである。
     文化財課では、協会会計外2会計が管理されており、適正な通帳管理、帳票類の保管状況等が確認されているところである。
     なお、この県費外会計の調査結果については、県教育委員会のホームページで公開されている。

    4 問題点

     県が刊行物を発行するときは、県刊行物作成要領に基づく事務手続きおこなうこととされているが、妻木晩田遺跡、青谷上寺地遺跡関係の図書類の一部については、この要領の手続きによらず、協会刊行物として有償頒布されている。
     県刊行物の取扱いについては、平成18年の行政監察監による「不適正な経理処理による資金造成等に関する調査結果」を踏まえ、県刊行物作成要領による事務手続きの徹底が周知されているところであるが、特にこの取扱いの例外扱いとする明確な根拠がないまま、協会刊行物として県内の物産館等で委託販売されてきた。
     また、この委託販売により、シンポジウム会場等での協会による直接販売の単価と委託販売単価とに違いが生じることとなっている。
     さらに、協会に関する情報提供も十分とはいえない状況である。
     このため、県民の利便性に配慮した販売方法を取っているとはいえ、県民に不信感、疑念を抱かせる結果となったことは、当該刊行物の発行に当たって十分な対応がなされていなかったと言わざるを得ない。

    5 今後の対応

    (1)県民の利便性を考慮した印刷、販売のあり方の検討

     文化財課では、より多くの方に県内の弥生時代遺跡・遺物に興味・関心を持っていただくため、協会を通じて関連する刊行物を発行し、妻木晩田遺跡、青谷上寺地遺跡関連の物産館や県内主要博物館等で委託販売を実施しているところである。
     この販売網は、県刊行物作成要領の制定以前から続けられており、県民の利便性を考慮すると、遺跡の近傍等での関係図書の販売は今後も継続していくべきものと考えられる。
     一方、上記4のとおり、県刊行物作成要領の手続きによらず、協会による印刷、有償頒布とする取扱いは、県民にとってわかりづらいものとなっていることは否定できないところである。
     このため、県刊行物作成要領に基づく事務手続きを踏まえつつ、現行の販売網による県民の利便性を維持するための印刷、販売のあり方について検討するべきである。
     なお、その際、協会管理の残部数の取扱いについても検討するべきである。
         

    (2)協会刊行物の販売単価の見直し

     協会による直接販売の場合と物産館等での委託販売の場合における販売単価の差を解消するため、単価設定の見直しを行うべきである。
     

    (3)協会概要の情報提供

     協会の概要についての県民への情報提供が少ない現状であるため、県HPにおいて、協会の概要を掲載し、広く県民の問い合わせに対応できるようにするべきである。

      

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