防災・危機管理情報


  

特別支援教育と障がい者スポーツ

鱸委員写真 教育委員 鱸 俊朗

 肢体不自由児のリハビリテーション(療育)に携わる者として基本にしていることがある。障がい特性の把握と障がいを軽減する手立てをはかる“障がいの療育”としての考え方は無論であるが、さらに重要なことは子供の“出来そうなこと”“できること”を見つけて強化していく視点である。その結果、笑顔が多くなり(人生を肯定的に)できることが増える(成長、発達として)もっとしたい、もう一度したいと思う経験を積むことである。すなわち、運動障がいを軽減する取り組みのみならず、子どもの日々の活動をどう広げるか、そして親が育児を楽しめるようどう支援できるか!いわゆる療育の「医療モデル」から「生活モデル」への転換である。

 最近、肢体不自由児とのかかわりの中で、障がい者スポーツへの参加により大きく成長する児を見る機会が多くなっている。特別支援教育の教材として、障がい者スポーツも含まれていると思うが、最適なライフステージで早期から取り組んでいただきたい教材である。子ども達に、「すべての人が大切な社会の一人」であり、「あなたも、その一人」であることを伝え、色々な問題があっても、沢山の人と助け合いながら、日々工夫と努力を重ねることで、問題は解決できることを、障がい者スポーツを使って学んでほしい。

 たまたま、私の病院で行われているリハスタッフの勉強会に参加して、障がい者スポーツについての演題発表で、車いすバスケットに情熱をもって取り組んでいる子供の手記をみて感動した。今はおそらく高校生になっていると思うが、幼少の時に治療を通して知り合った児であった。当時は、投げやりな言葉を使い、治療に非協力的で悩まされた児であった。自己肯定感の低い脳性まひ児である印象があった。

 以下、その内容を紹介すると

“「自分の体のことについてよりよく考えるようになった」僕がスポーツをしていちばん変わったことだと思う。スポーツをする前はリハビリに対して消極的でした。いつも「やりたくない」の一点張りだったリハビリも、車いすバスケに出会ってからはリハビリをする事で今より上手くなれるのではないかと思い180度考えがかわりました。今はもっとリハビリをしたいです。スポーツをしてる仲間の声より”

である。なんという変貌であろうか!!。

 障がい者スポーツは第2次世界大戦中のイギリスで、増加する脊髄損傷患者に対するリハビリテーションとしてスポーツが取り入れられたことから始まったといわれている。スポーツの持つ遊戯性は意欲と自発性を促し、障がい児.者にありがちな孤立した自己中心的な心理状態から心を開く良い手段である。また、高校卒業後の活動量の低下からくる日常生活レベルの低下の予防にも、継続した運動習慣が保たれる障がい者スポーツは大きな力となる。

“障害のない人はスポーツをしたほうがよいが、障がいがある人はスポーツをしなければならない”(ハインツ フライ;スイスの車いす陸上競技選手。ロンドンマラソン車椅子の部での3度の優勝や、45歳の時に参加した2003年の世界陸上パリ大会で5個のメダルを獲得する)

 2020年東京オリンピック、パラリンピック開催まであと2年を切り、パラリンピックでの鳥取勢の活躍が期待されるところである。また障がい者スポーツによる共生社会実現を目指す新しい障がい者スポーツ拠点施設が、布施総合運動公園内に20203月完成予定で計画が進められている。2020年度までに鳥取県の障がい者スポーツ実施率を日本一となる50%まで引き上げることを目標に、併せて必要な人材の育成を行なう計画も進んでおり、今後の特別支援学校の障がい児スポーツ事業への関わりが期待されている。

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