教育委員長 中島 諒人
春ですね。進学、進級されたみなさんおめでとうございます。就職したり、職場を変わったという方もいらっしゃると思います。あたたかい風が吹いて、いろいろなことが動き始めるこの季節は、なんだかワクワクします。でも、「春はちょっと気が重いんだよね」という人も結構いるんじゃないでしょうか。
え?そんな人はいない?そんなことないと思います。たとえどんなに少数派でも、私が実はそうなんですから。だって、春はいろんなことを一からやり直さなければいけないじゃないですか。新しい人、新しい学校、新しい関係、たくさんの「新しい」との出会いは、悪いことではない。わかってはいても、やっぱりストレスなんです。心の負担です。
生まれついての冒険家のような人には、それは100%のワクワクかもしれません。でも繰り返しますが、私は正直言って学校時代かなり気が重かった。今でも少しそういう気持ちがあります。だって、新しいことや人とのつながりをゼロから築かなければいけないんですよ。あいさつしたり、自己紹介したりしながら、自分の居場所を作らなければいけないんです。気が重くないわけがないでしょう。
子どもの頃、砂場とかを掘っていて、コガネムシの幼虫やミミズに出会うことがありました。冬眠していたらしいカエルに出くわしたこともありました。彼らにしてみると、努力してその場所までもぐり込み、居心地のいい場所にして、ほんわかと眠っていたのに、突然天井をはがされ、部屋をこわされ気持ち良さをうばわれた。春の環境の変化は、少しそれににたところがあるように思うんです。
「嫌いなことは、ある状態から別の状態に移ること」と話してくれた人がありました。暖かいところから寒いところ、またはその逆。人間は、たいていの環境に自分をならします。他人から見たら好ましいと思えない環境であっても、それなりにそこになじむやり方を見つけます。いいとか悪いとかは置いておいてそうしないと生きていけないからです。するとそこが居心地のいい場所になって、そこから動きたくなくなります。本能的なことだと思います。春は、そういう安定をゆるがす季節なのです。
何が言いたいかというと、「春はハツラツ、前向きバリバリ、全部楽しい!」という人ばかりではない、ということです。気が重かったり不安な人もたくさんいる。そのことを、100%前向きの人にもわかってほしい。それから春が重いなあという人は仲間が割といることを知ってもらいたい。
だけどその一方、みんな誰でも、生き物として春が気持ちいいのも確かだと思います。あんなに寒かったのに、暗かったのに、空気がゆるんで明るくなるんです。まずはその気持ちのよさを一人(一匹、一つ)の生き物として味わいたいなと思います。
桜も美しいですよね。みなさん、がんばりすぎずのんびりやりましょう。